新人弁護士2割が就職出来ず?

 聞くところによると、司法修習を終了して2回試験に合格し、弁護士志望でありながら一括登録時点で就職出来なかった方の数が、約400名に上ると推測されているそうだ。

 司法試験に合格し、司法修習を終了して、卒業試験である2回試験を受験した人が2047名、2回試験合格者が1991名、裁判官・検察官の採用が昨年と同じくそれぞれ98名・66名であったと仮定すると、

 1991名-(98+66)=1827名が弁護士になる資格を得ることになる。

 そのうち、本日一括登録時点で弁護士となった人は1423名。

 つまり、1827-1423=404名が、2回試験に合格しながら弁護士登録できていない(いきなりの独立開業も出来ず、就職も出来ていない)ことになる。就職率8割以下だ。大学を出たあと、高いお金を出して法科大学院に通い、司法修習を経て、大学生の企業への就職率よりも悪いんだからあきれるほかない。

 理由は簡単。ニーズがないからだ。

 司法制度改革が叫ばれた2001年時点と2010年を比較しても、

 労働事件は約1300件増加、家事事件は22万件増加しているものの、民事・行政事件は約92万件の減少、刑事事件も49万件減少、少年事件も12万件の減少(差し引き130万件以上も減少)だ。

 間違いなく増えるといわれた専門訴訟である、医療過誤事件は797件から776件へ21件の減少、知財関連(金銭目的)は305件から329件に24件増、知財関連(金銭以外)は、266件から277件へ10件増、と完全な横ばい状態。

 つまり司法制度審議会の法的需要の予測は、素人の競馬予想屋でもそこまで外さないくらいの、まるっきりの大外れ、予想したドアホな奴の顔が見てみたい、そんな状況だということだ。

 それにも関わらず、弁護士のニーズがあると叫んでいる、法科大学院協会のエライ教授さん、法社会学の教授さん、マスコミさんは、どうぞ新人弁護士を多数雇用してもらいたい。あなた方が、あるあると仰っている弁護士のニーズを開拓して、法の支配を隅々まで広げるチャンスだろう。

 今ならいくらでも新人弁護士を雇用できるはずだ。

 法科大学院や法社会学のエライ教授さんがいうとおり、本当にニーズがあるなら(まさか採算の取れない仕事をニーズと呼んでいるはずはないだろうから)、少子化で経営難がささやかれる大学や、合格率低迷や文科省からの補助金カットに怯えている法科大学院の財務状況にもプラスになるし、就職の面倒を見てくれる大学や法科大学院なら人気も高まるはずだ。

 良いこと尽くめじゃないか。

 すぐにでもやるべきだ。

 マスコミだって、弁護士のニーズがあるある、困っている人はたくさんいる、と言い張っているくらいなんだから、自ら新人弁護士を大量雇用して、困っている人を助けたらいいじゃないか。就職に困っている新人弁護士を救うばかりではなく、困っている人を救うのだから十二分な社会貢献活動にもなるし、うちの新聞を読んでくれたら法律相談は3回無料だなどと勧誘して、ネットに奪われている顧客を取り戻すことも出来るんじゃないか。もちろん、「ニーズがある」と主張する以上、経済的にペイするニーズがある(放置されている)という意味だろうから、わざわざ全国紙の紙面で広告するなどして、他の町弁を圧迫することもないだろうし、経営的にも十分な支えになるだろう(もし、経済的にペイしない要望を、ニーズがあるといって弁護士に押しつけているのなら、それは、「一部5円なら日経・朝日を読みたいという人がまだまだ世間にはいる。だから新聞のニーズはある。そのような人にも新聞を読ませるべきだ。」と言っているのと同じである)。

 しかもすぐ出来る状況になっているじゃないか。

 何故やらないんだ。

 マスコミや法科大学院擁護派による嘘と世論の誤導には、私はもう飽き飽きしている。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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