総務省~法科大学院の評価に関する研究会報告2

 総務省の法科大学院の評価に関する研究会報告に関する続報です。

 研究会報酷暑は、法科大学院に対しても、事実を見据えた意見を述べています。法科大学院に対しては、①制度設計・入学定員、②多様な人材の確保、③教育内容、④修了認定、⑤認証評価の5点に関して委員の意見が記載されています。

 詳しくは、報告書をお読みいただくとして、私から見て現実を見据えた意見と思われる意見をご紹介します。

【法科大学院について】

①制度設計、入学定員について

・法学部を有する大学は法科大学院を作らないと存在意義が失われるかのような強迫観念から、そのほとんどが設置をしたため、約6000人弱の定員となってしまった。

・法科大学院を修了しても新司法試験に合格できない人が多数いるというのは、うまく制度設計ができていないと思う。

・現行制度では、ストレートで法曹になっても26歳で、受験3回目で合格すると29歳、不合格となると30歳前後で就職先を探し始めるということになる。

・入学定員の問題は、時間はかかっても、競争原理によって良い法科大学院が残っていって制度が落ち着いていくという話であったが、他方で法曹需要が伸びず、弁護士の就職難の問題が生じてきており、競争原理だけでは解決できなくなっている。

・旧国立大学の法科大学院の入学定員の削減が、一律に行われているように見えるが、合格成績の良い大学院は教育艦橋・内容に優れていることが高い確率で推定され、志願者も多いはずで、市場原理が働いていないのは、「法科大学院教育の充実」というテーゼとも矛盾しているように思われる。

②多様な人材の確保

・社会人は、仕事を辞めてあるいは、出世をあきらめなければならないかもしれないという負担を負ってまで挑戦しても、どれくらいのリスクがあるか分からないという不安があるから、踏み出せないところがあるのではないか。

・司法試験の合格率が高いところは、法学部の4年プラス法科大学院の既習コース2年の計6年という形での学生を確保しようとする傾向にあり、法学部以外の多様な人材の確保という理念から大きくずれ始めているのではないか。

・多様な人材の確保といいながら、働きながら学ぶための夜間コースがある法科大学院が少ないなど、多様な教育の仕組みが保障されていないのではないか。

(抜粋ここまで)

 法科大学院は70校以上あったように思いますが、夜間コースがあるのは8校程度です。多様な人材を法曹界に導くための法科大学院が、全く逆の制度になっていることは、これだけからも明らかでしょう。旧司法試験なら、働きながらでも何年でもかけて勉強ができました。しかし、法科大学院制度ではそうはいかないのです。

 研究会の報告はさらに続きます。

(続く)

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です