ご存じの方も多いと思うが、総務省が、法科大学院の評価に関する研究会の報告書を出している。
当初、7名の委員のうち4名が学者・法科大学院関係者であり、朝日新聞で法科大学院擁護の論陣を張っている、おなじみのコリン・PA・ジョーンズ氏も入っていることから、どうせ、「法科大学院は、問題は少しあるけど良い制度なんだよね!」という、もう飽き飽きした結論が出るものと思っていた。
ところが、同研究会は、文科省や法務省の、法科大学院万歳論に迎合することなく、かなり現実を見据えた議論を行ったようだ。主催する省庁が違えば、こうも目から鱗が落ちるものか、と驚くくらい、委員は現実を素直に見て議論されているようだ。
まずは、詳細な報告書が出されているので、それをご覧頂きたい。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000095209.pdf
私から見て、現実を見据えた委員の意見だなと思われたものは下記の通り(抜粋は一部の場合もあります。正確には上記報告書をご覧下さい)。
【法曹人口の拡大について】
(抜粋開始)
・法曹人口を考える際に日本の実情・隣接法律専門職・ニーズ等の緻密な検討に基づかず、何となく外国との比較で最低でもフランス並みというような数字を設定したから、今のようなことになっている。
・法曹というものの中身、質を考えないで、人数を大幅に増やせば需給バランスが崩れるのは当たり前。
・弁護士の就職難をみると、法曹人口5万人の構想が問題だったのではないか。
・法曹人口5万人構想について、裁判官・検察官・弁護士の数をそれぞれどれくらいにするかという議論がほとんど行われておらず、結果的に弁護士の数だけが拡大していくことになっている。
・法曹人口5万人構想の中には、企業で法務をやる人も対象とされていたのではないかと思われる。新卒入社後5年労働した人材は立派な即戦力であるが、そこに「法律に関しては詳しい」新卒学生が加わって勝負になると考えていたのか。
・法曹の役割を検討するにあたって、隣接法律専門職の役割を余り考慮した議論が行われておらず的を射た解決策が得られるか疑問。隣接法律専門職の業務拡大とともに弁護士と隣接法律専門職との競争も増加している。
・今でも、例えば学校でちょっとしたトラブルのとき、親が来ないですぐ弁護士が来て、ああだこうだと言って困ると学校の先生が言っている。弁護士を増やすことが、変に需要を増やすことになりかねず、社会全体として果たして幸せなことなのであろうかと考えてしまう。
(抜粋ここまで)
報告書では、この後【法科大学院について】、【新司法試験について】などについて、意見が交わされたことが記載されている。追ってご紹介したいと思っている。
(続く)
※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。