進みつつある司法占領?~金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその2

 IPによる、外国巨大ローファームによる日本の法律事務所支配について、特にどうだって良いという意見の方もおられるだろう。しかし、外国の巨大ローファームは、慈善事業で日本に進出してくるわけではない。あくまでビジネスのため、儲けるためだ。

  「専門家が、正義を失いかつて弁護士と医者、会計士は自らを公的責任を伴う民間プロフェッショナルとみなしていた。自分の事務所のためだけでなく、社会全体にとって善か否かを考えながら責任感を持って行動していた。弁護士は、時間を浪費する訴訟ややみくもな買収を考え直すよう依頼人に助言することさえあった。今や弁護士だけではなく、あらゆる専門家が変わってしまった。」とニューズウイーク紙(日本版)で嘆かれているように、現在のアメリカの弁護士は、時間を浪費する訴訟や、闇雲な買収であっても、儲けのためなら依頼者に勧める現状すらあると思われる。

 したがって、如何に日本のパートナーが、闇雲な買収は企業の力を逆に削いでしまうと考え、見直すよう企業に進言しようとしても、正義を失い儲け主義に染まってしまった可能性のある英米系弁護士からノーといわれれば、従わざるを得ないのだ。

 金子会長の分析によると、2007年度売上1位のクリフォード・チャンスは、弁護士数2654名で、売上高およそ22億1000万ドル、当時のドル円レートである1ドル=91円換算で、2002億9100万円である。つまり、クリフォード・チャンスというローファーム一つに、2000億円ものリーガルコストの支払がなされているのだ。

 これに対し、平成21年度の日本司法支援センターの資料を見ると、民事法律扶助事業経費として支出予定の予算額は(全国民に対してのものだと思われるが)わずか139億8400万円である。弁護士数2654名のクリフォード・チャンスの売上の約15.75分の1の予算しかつけられていない。

ちなみに、クリフォード・チャンスは総売上1位のローファームであり、弁護士一人あたりの売上1位は、総売上48位のキャドワルダー、ウイッカーシャム&タフトNYで、一人あたりの売上額(年収)約1000万ドル(9億1000万円)だ。

 いかに、英米系ローファームが高額なリーガルコストを要求しているかは、これだけでも一目瞭然だ。

 裏を返せば、現在の日本の法律事務所が如何にリーズナブルな値段で、リーガルサービスを国民に提供しているかがお分かり頂けるだろう。海外に進出した企業の方なら、どれだけ日本の法律事務所が安価なリーガルサービスを提供しているか、十分ご存じのはずだ。

 自由競争を推し進めた、英米のローファームの高額収益に鑑みれば分かるが、自由競争を進展させすぎた結果、リーガルコストは、トータルでは、むしろ増大するのだ。

 社会正義など考えることもなく、弁護士業を儲けの手段としてのみ捉え、法外に(しかし、彼らにしては当然の)高額なフィーを取る英米系ローファームの進出が果たして良いことなのか、私には分からない。

 次に、海外ローファームの日本への進出について金子会長の分析は続く。

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