男女共同参画からの提案に弱い常議員会?

 男女共同参画推進本部(以下「共同参画」という。)から、常議員会に会費免除に関する提案がなされ常議員会で議論、採決がなされた。

 現在、大阪弁護士会では育児期間中の会費免除の制度はあるが、育児期間中に弁護士業務を休業していないと免除が適用されていない。共同参画は、この休業要件を撤廃し、育児期間中に弁護士業務を行って売上を上げていても、会費免除を認める内容にすべきだというのである。休業要件撤廃を要求する理由は、「育児期間中における会員の負担軽減を図り、育児参加を促進する(その結果、男性の育児参加を促進することになる)ための積極的施策」として行いたいとのことであった。

 大阪弁護士会の会費免除規定には、疾病の場合の規定もあるが、この場合は常議員会で調査小委員会を編成し、調査小委員会が本人・主治医等に意見を直接聞くなどして、本当に業務ができない状態かを厳格に判断し、弁護士業務遂行が不可能で真にやむを得ないと判断された場合でないと会費の免除は受けられない。近親者の疾病や老親の介護の必要性があって、弁護士業務の大半を休む必要がある弁護士がいても、その会費は免除対象にすらなっていない。

 弁護士会費は弁護士会維持存続のための不可欠な財源であり会費収入は極めて重要である。会社と同じで弁護士会もお金が無ければ何もできない。

 その会費収入の重要性からすれば、会費免除は真にやむを得ない事由がある場合に限るべきであり、疾病の場合の厳格な調査は会費収入の重要性に鑑みれば相当なものであると考えられる。なぜならこのように厳格な判断を行わないのであれば、どの程度の事由があれば免除されるのかという限界が不明確となり、ずるずると会費免除される場面が拡大していき、弁護士会の経済的基盤が崩壊する危険性があるからである。

 また、上記の通り会費収入の重要性に鑑みるならば、今回の共同参画からの提案にように、何らかの政策目的を実現するための積極目的での会費免除は、可能な限り認めるべきではない。
 なぜなら、積極目的での会費免除を認めれば、どのような積極目的であれば免除が相当なのかという点が全く不明確となるからである。


 例えば、今回の提案を受け入れ、育児の男性協力は素晴らしいからそれに繋がる育児期間中の会費免除に休業要件をなくしてよい、という判断をした場合、その後、家族の看病・介護を行うことは素晴らしいことだから看病・介護の負担を負う会員は、弁護士業ができていても会費免除しようという主張が出てきた場合、どうするのか。男性の育児参加促進のための会費免除はOKだが、家族の看病・介護のための会費免除はNOであるという判断ができるのか。
 さらに、積極目的での会費免除を認めるのであれば、今回の共同参画のように声の大きな委員会の意見ばかり通る危険性も否定できない。

 私の個人的意見にはなるが、育児期間中とはいえ、弁護士業務を実際にやっているのであれば、大阪弁護士会の会員として弁護士業務を行って売上を上げていることになる以上、大阪の弁護士をまとめている大阪弁護士会に何らかの負担を負わせていることになるから、その経費である弁護士会費を支払うのは当然だと思う。また、売上を上げている以上、会費負担能力も認められるであろう。

 誤解して欲しくないのだが、私自身、男性の育児参加促進を否定しているわけではない。仮にある積極目的(例えば今回のように、男性の育児参加促進)を達成するために、該当会員に対して会費免除相当額の援助が必要なら、そのような制度を作り特別会費を徴収して援助を実行すれば良いのであって、会費免除という目立たない手段で、結果的に弁護士会の存続の基盤である経済的基礎を揺るがす危険のある方策を取るべきではないという意見なのである。

 将来の弁護士業界の悪化に伴う会費減少の事態に陥るなどして、会費免除を廃止する必要性が出た場合には、疾病で働けない弁護士の会費免除は維持しつつ、積極目的での会費免除から停止・廃止すべきであることは当然であろうと思われる。この場合、特別会費を徴収する手段で行っておけば、その積極目的の会費免除について廃止する可能性についてもその制度の中に予め定めておきやすく、廃止しやすいとも考えられる。


 ところが、共同参画側の提案者もしたたかであり、新たな会費を徴収する制度を提案すれば、多くの会員から反対にあう可能性が高いことは分かりきっているから、できるだけ目立たない会費免除という手段をとっているのである。また、総会では大量の委任状等で決議できるから、常議員会さえ通過できれば、なんとかなるという目算もあるのだろう。

 共同参画からの提案理由の中には、財政的になんとかなるという検討結果や、他の弁護士会が休業要件を撤廃していることなども理由に上げられていたが、私はそれらの理由は何ら根拠になっていないと考えている。

 仮に今回の会費免除を追加して行っても問題ないほど弁護士会費が潤沢に残っているというのであれば、それは本来会費の取り過ぎであり、全会員に還元すべきものであるはずだ。


 休業要件の撤廃について他の弁護士会と平仄を合わせる必要あるという理由なら、国選・管財事件の負担金制度を取っていない弁護士会もあるのだから、そちらと合わせるべきだろうし、ラックの持込案件まで会費負担を負わせているのは日本中で大阪弁護士会だけのはずだから、その負担金制度も廃止すべきという議論にならないとおかしいではないか。

 以上のような主張を常議員会で行ったが、この議案を総会に提案するかどうかの採決で反対したのは、インターネット参加の常議員では私1人だけだった(会場参加の方の賛否は不明)。インターネット参加の常議員の方で保留された方が4名いらっしゃったことが救いだったが、多くの常議員の先生方は、あっさり賛成されていた。

 私は10年以上継続して常議員を務めさせて頂いているが、総じて男女共同参画推進本部からの提案について、異論を述べる先生や反対される先生は極めて少ない。


 私の目から見れば、常議員会は、男女共同参画からの提案に、すこぶる弱いのである。

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