先日ブログにも掲載したが、日弁連が司法修習中に給費を得られなかった世代に対して、会費減額をする案を撤回したと思ったら、こんどは20万円を給付する案をだし、各単位会に意見照会をかけている。
20万円の給付を谷間世代に行うと、日弁連にとって(つまり全世代の弁護士にとって)約20億円の支出となる。
どうしてそんなに、日弁連執行部が谷間世代を優遇したがるのか、私には謎だ。ちなみに同じ時期に給費を得られずに修習を行い、裁判官・検察官になった人たちには特にそのような救済策はなされていないし、救済策を講じる予定もなさそうだ。
常議員会で、討議事項に上がったので、私は2点質問してみた。
①谷間世代の裁判官・検察官に国が救済策を講じるかどうか、そのような動きがあるかについて調査しているのか(これは従前、谷間世代救済の件について、執行部が常議員会で、裁判所検察庁の動向も見ながらと発言していた記憶があるために質問した)。
②このような施策を実行する立法事実・根拠事実をどうやって把握しているのか。客観的な谷間世代の困窮を示す調査資料があれば出して欲しい。
担当副会長の回答は、①について、調査していない。②については、客観的な調査は行っていないので資料はない。日弁連執行部が、各地でそのような声があると聞いているためではないか。というものだった。
およそ、法律家には釈迦に説法ということになるが、『「立法事実」とは、立法的判断の基礎となっている事実であり、「法律を制定する場合の基礎を形成し、かつその合理性を支える一般的事実、すなわち社会的、経済的、政治的もしくは科学的事実」(芦部信喜、判例時報932号12頁)』を意味する。
日弁連が、一般会計の剰余金のうち、ほぼ半額に匹敵する20億円もの支出を行う施策を行う場合、その支出の合理性を支える事実について、当然きちんと把握して然るべきだろう。
その根拠が、「執行部がそのような声を聞いたから」、というのではあまりにもお粗末にすぎる。
お話を簡単にするために、全員が同じ額を納税し、同じ公共サービスを受けている人口4万人のB国(日弁連)があったと仮定しよう。T世代(谷間世代)は、いまは多くがB国の国民だが、B国の国民になる前に、S国(司法修習)で、無給という酷な扱いを受けていたことあったと例えることが出来そうだ。なお、T世代のなかにはJ国(裁判官)、P国(検察官)の国民となった者もいるが、J国、P国ではT世代に対して何らの施策も採っていない。
このような状況下で、
「B国国民になる前に、S国から不当な扱いをうけたT世代の人が、S国から受けた不当な扱いが原因で困っていると聞いたんで、事実は全く調査していませんが、そのT世代の国民全てに対して申し出てくれれば、国庫一般会計に貯めていた万一の時のためのお金の半分を出してばらまきます。よろしくね。」、なんてことをB国首相が言ったらT世代以外の納税者は納得できないどころか、激怒するはずだ。
そもそも、T世代に対して不当な扱いをしたのはS国なんだし、その不当な扱いはB国国民になる前に行われた話なのだから、S国に責任を問うのが筋だろう。
確かにB国が好景気に沸いていて、右肩上がりの成長が今後も十分見込める余裕十分の国民ばかりであったのであれば、あるいは、このような施策もあり得るのかもしれない。
しかし、B国国民の所得は各世代において減少しつつある。国税庁統計(日本)から算出されたデータによれば、所得の中央値を見ると、2006年の1200万円から、2014年には600万円と、わずか8年でキレイに半額になっているとの指摘もある。それでもB国の税金(日弁連会費)はほとんど減額されていないどころか、滞納を続けるとB国を追放される処分を受ける苛酷なものとしてB国国民に課されている。
仮にB国の国民になったのだからということで、(J国・P国との均衡を無視して)相互に助け合うべきだと強調するにしても、全体としてB国が傾いている状況でT世代以外の国民も納付した税金を使うのだから、きちんとした根拠とその支出の合理性を全国民に説明する必要があるはずだ。
日弁連執行部の人気取りかどうか知らないが、雰囲気で20億円もの支出をされてはたまったものではない。
そんなに助けてあげたいなら、何度も言っているように、助けてあげる余裕があって、助けてあげたい人たちで基金を作ればいいじゃない。少なくとも日弁連執行部に所属する人たちは、しつこく谷間世代救済を主張するんだから、喜んで私財を投げ出してくれるはずだ。
良いカッコしたいけど、かかる費用は他人の金で、とは虫がよすぎないか。