司法試験合格後に、合格者は司法修習を受けることになる。そして、その修習の最後に受ける修了試験のことを、一般に二回試験と呼んでいる。
今年の二回試験の不合格者は、54名だったそうだが、そのうち40名以上が民事弁護の科目で落第点をとってしまったとのことだ。
裁判科目、刑事弁護科目での落第点ならまだ理解は出来るが、民事弁護科目で落第点をとるとはちょっと想定しにくい事態であり、どうやったらそんなに民事弁護で落ちるのか、不思議に思っていた。
ところが、先程ある方から、ほぼ確かな情報ということで聞いたのだが、民事弁護科目の落第者の多くは、民法94条2項の類推適用が書けなかったらしい。
仮にそのお話しが事実だとするととんでもないことだ。
一般の方には分かりにくいとは思うが、民法94条2項の類推適用は、超弩級のメジャー論点であり、法律家を志すものであれば理解していないはずがない、ほぼ常識と言ってもいいくらいの論点である。
94条2項の類推適用が可能(必要)な場面でそれに気づけないとは、どのくらいとんでもない理解不足かについて、分かりやすく医師に例えていえば次のような感じだろうか。
母:「先生、うちの子が熱を出しているのですが大丈夫でしょうか?」
医師:「どれどれ、ははあ、これは風邪ですね。薬を出しておきましょう。」
(翌日)
母:「先生、子供の熱が下がらないのですが。」
医師:「それはいけませんね。手術しましょう。」
母:「え、手術ですか!?ただの風邪だって聞いていたのに。大丈夫なんでしょうね。。。」
医師:「もちろん全力を尽くしますよ。」
(手術後)
母:「先生、手術は成功したのでしょうか。うちの子は大丈夫なのでしょうか。」
医師:「残念ですが、手術では直せませんでした。残念ですが、これが、現代医学の限界です。。。」
母:「そんな、ただの風邪だって言ってたのに。。。」
医師:「いや、病名は風邪ですよ。風邪を手術で治すことはやはり出来ませんでしたね。ははは。。」
例えていうなれば、上記の例に匹敵するほど信じがたい理解不足なのである。
これでは、どんなに合格させたくても、実務家として世に出すわけにはいかないだろう。
しかし、問題は二回試験にとどまらない。
二回試験は、法科大学院を卒業し、司法試験に合格し、司法修習を経たものが受験しているのだ。逆に言えば、94条2項類推適用がきちんと書けないレベルでも法科大学院を卒業し、司法試験に合格してしまえるということだ。
医師に例えれば、風邪を手術で直してみようと思うレベルの人間を医師国家試験に合格させるほどの恐ろしさなのである。
確かに問題を見ていないので、断言しきれない部分はある。
また、二回試験は、長時間に及ぶ苛酷な試験であり、受験生が心身ともに疲れ切っていた可能性はある。
しかしそのような場面でも、民法94条2項類推適用は、最低限抑えておかなければならない超基本論点であり、書けなくてはならない。
もし本当に、民事弁護の落第理由が情報どおりなら、上位合格者はともかく、司法試験の合格最低レベルは、危機的状況まで落ちていると言わざるを得ないだろう。
既に恐ろしいところまで事態は進行してしまっているのかもしれない。