大学受験の秘訣

 私の京大グライダー部時代の友人に、灘中・灘高を経て京大医学部に来ていたT君がいる。運動神経も良く、性格も朗らかで、なんでもそつなくできるが、決して偉ぶることのない面白い男である。

 T君とは、奈良女子大・体育会主催のオープンスキーに一緒に参加し、夜の宴会では二人で一緒に、当時流行っていた少年隊の「仮面舞踏会」などを歌って、盛り上げたりしたこともある。

 あるとき、私は、T君の誘いで、夜食のラーメンを食っていた。寒い時期で、新聞には前日に行われた大学入試問題が掲載されている。京大の国語と阪大理系の数学が掲載されていたようだった。

 T君は、ラーメンを注文したあと、新聞を手に取ると阪大の数学の問題を、目を輝かせて見つめていた。珍しくしゃべらんなぁ~と私が思っていると、店員がラーメンを運んできて、テーブルのうえにゴトリと置くのと殆ど同時にT君が呟いた。

T:「なるほどな~。」
私:「なるほどな~って、なんやの」
T:「解けた。」
私:「え!全部かいな。うそやろ。」
T:「おう。全部。計算は要るから解答書くなら時間かかるけど、間違いなく解けた。」
私:「おうって、ラーメン来るまで10分ちょいやで」
T:「まあな、意外に面白い問題やったで」

 京大入試の数学には苦戦した記憶のある私は、手品でも見たように呆然としながらラーメンをすすった記憶がある。

 数年前、そのT君と久しぶりにあった際に、大学受験時の勉強の話になった。T君によると、受験勉強の秘訣というものがあるらしい。

 聞いてみると、その秘訣とは驚くほど単純だった。

 「同じ参考書、同じ問題集を繰り返して完璧にすること。」

 たったこれだけだった。

 ただ私も、それには同感だった。
 私も大学受験時代に、気に入った英語・日本史・物理・地学の問題集・参考書を5~10回以上繰り返し、得点源にしていたことがあったからだ(苦手な数学は寺田の鉄則を2回繰り返すのが精一杯だったが)。さすがに現代国語の科目は別だったが、それ以外の科目では有効なやり方であると、私も感じていた方法だった。

 一見、一度解いた問題集を再度解くのは無駄なように思える。しかし、一度解いた問題集に再度挑戦しても、間違える問題は出てくる。一度解けたにも関わらず、もう一度解けないのなら、そこは自分の弱点だ。二度とも解けなかったのであれば、かなり大きな弱点だ。重点的に復習すべき箇所が明らかになる。
 また苦手ではない分野であれば、一度解いた問題はさして時間がかからずに解けるし、別の解き方がないか考えるきっかけにもなる。感覚的には、半分~2/3の時間で3倍の効果が得られるように思われた。

 ただし、やみくもに繰り返していてもダメである。
 10回も繰り返していると英語の正誤問題などでは解答を覚えてしまっている場合も出てくる。そのような場合、人間は弱いもので無意識にその覚えた解答を吐き出して「正解した」と自分を納得させたくなるものだ。しかし、それではダメだ。その誘惑に耐えて、なぜその部分が誤りなのかという理由を、頭の中でしっかり確認してから解答する必要(きちんと解く必要)がある。そうすることによって、初めて内容が身につくように思う。

 私は、自分のやり方がT君の秘訣と同じであったことを嬉しく思うと同時に、これは多くの人にも同じことではないかと感じていた。

 いま大学受験で頑張っている受験生には間に合わないかもしれないが、一つの方法として高校1・2年生の方には、参考になるのではないかと思う。

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