(続き)
「HbA1cが高めです。」
とかかりつけのお医者様が、血液検査の結果を睨みながら冷たくS弁護士に宣った。
血糖が高いとそうなるらしい。
う~ん、そうなのか。S弁護士の頭の中では、原因探求が始まる。
確かに仕事のストレスはある。
不規則な生活になりがちだ。
9~17時の定時勤務なんて絶対に無理なのは、弁護士稼業をしていれば誰だって分かることだ。
弁護士をやめない限り、これは変えられまい。
両親も糖尿の気があるそうだし、遺伝的にも弱いのかもしれん。
でも納得いかんぞ。
夕食にはだいたい野菜をかなり食べるようにしている。
通勤時だって早足で歩くよう心がけている。
もともと飲めないタチだから酒も飲まないし、タバコも吸わない。この歳になると、ねーちゃんの機嫌とるよりも犬とのんびりしたいくらいだから(飼ってないけど・・・)、北新地で遊んだりもしない。
個人の感想らしいが、毎日一杯で健康が劇的に改善すると謳っていた、まずい青汁だって、嫌々だが毎朝事務所で飲んでいる。
・・・宗教には入っていない。
とS弁護士が考えていたところにお医者様が「運動ですな。有酸素運動、例えば歩くとか。」と仰った。
単純に歩くなんざ、面白くも何ともないぜ。絶対に続かないだろうな~。と意外にも、冷静に自己分析のできるS弁護士には、みえみえの結末がすぐ浮かぶ。
なんとか、自分から運動するように持ち込めないか。
そういえば、将棋の大山康晴15世名人も体調を崩されてから、ゴルフを始めて、どんどん歩き、体調を回復させたことを何かの本で読んだことがあった。
大山名人と言えば、将棋界の第一線に長らく君臨し続けてきた巨星。
その巨星が健康維持のために活用したのなら、凡人のS弁護士にだって、健康維持になりそうである。
しかも、将棋ファンのS弁護士は、倉敷に行ったときに大山名人記念館を見学し、職員の方に珈琲をご馳走になってしまい、そのまま帰れずに、谷川九段のファンであるにも関わらず、つい大山名人の扇子を買って帰ってきてしまったという経緯もある。
よ~し、これだ。
幸い、以前からお付き合いさせて頂いているIS田教授が最近ゴルフを始めていると聞いていた。
伺ってみると、なんとプロについて習っているらしい。それに、公認会計士のS木先生と一緒に、月一ラウンドをしているそうではないか。
IS田会に入って、血糖値を下げよう!
これがゴルフ再開のきっかけになった。
(続く)