15年ほど前、S弁護士がイソ弁として勤務していた事務所では、ボス弁は3人ともゴルフをやっていた。
そして、S弁護士もボスからもゴルフをやることを勧められた。大の大人が止まっているボールをぶっ叩いて、穴ぼこに入れて、何が面白いんだろうと思いつつ、父親に聞けば、誰かに習った方が良いとのこと。
ふーんそうなのか、意外に素直なS弁護士は、インターネットで探して、近くのゴルフスクールに体験入学してみた。確か5000円で3回くらいのお試しレッスンだったと記憶している。
最初は握り方を教わって、6番アイアンを振らされた。
上手く当たらない。
空振り、カスあたりの連続だ。
止まっている球の方があたらんのか!
「なんじゃあこりゃぁ~」と心の中で松田優作っぽく愚痴りながら、クラブを振り続ける。
あまりに苦戦していることに気付いたのか、若い女性を熱心に教えていた、ゴルフのコーチが時折こちらを見て、S弁護士に向かって、「そうじゃなくて、こう振るの。」と身振りで示すが、そんなスイングができるなら、そもそもここに来ているわけがないじゃない。
あかん、わからんわ。そんな身振りで示されたって、すぐに再現できる程の運動神経がある人なんてどこにいる。そんな運動神経あったら、こんなとこ来るかいな!
心の中で文句を言いつつも、カスあたりは続く。
極めて恥ずかしい。
スクールには、中学生くらいの子供も、若い女性もいるが、間違いなく段違いに、ええ歳こいたS弁護士が下手っぴーなのだ。当たり前と言えば当たり前なのだが、当時はまだ見栄もあったのだろう。恥ずかしくって仕方がない。
見かねたコーチがつかつかとやって来て、「トップはここ」、と力任せに身体をひねられた。S弁護士の、脇腹には激痛が。。。
くそーこんなスクール、誰が来てやるか!と思いつつも既に払ってしまったレッスン料はちともったいない。
そこで耐えて、3回目のスクール。
別のコーチがS弁護士のスイングを見て、「そうじゃなくて、バチーンと打つの。バチーンと」と口頭指導。
そのバチーンができるんやったら、苦労せんがな。
それに、バチーンてなんやねん。
大阪のおばちゃんの、「ゴキブリが、わーってやってきてなぁ」の「わーっ」と変わらんやないの。
もうこれはあかん。
スクール行っても無駄やわ。
バチーンが分からんS弁護士に、なんぼ指導して頂いても豚に真珠どす。
ということであえなく、S弁護士のゴルフスクールは、きっかり三日坊主で修了することになった。
その後何度か、友人に誘われて無理矢理コースに出たこともあるが、ティーグラウンドで友人と別れ、綺麗に整備されたフェアウェイには近寄らず、急斜面やら林やらをゲリラ戦のように渡り歩き、あらぬ方向からグリーン付近に現れて、バンカーの往復びんたから5パットかギブアップという盛りだくさんの内容で、何~にも面白くなかった。
自分が何打打ったのか分からなくなるので、打数カウンターを買ったものの、10カウントでは足りないことが分かり、15カウントできるものに買い換えたりもしたが、やっぱり面白くも何ともない。
友人のM弁護士に打ちっ放しに連れて行かれたこともあるが、打席に入り、おもむろにドライバーを振ったら、ボールは物理法則を無視したかのように、ほぼ垂直に舞あがり、真上の屋根に直撃!
「どんな打ち方したら、そんな方向に飛ぶネン?」とあきれられた。
極めつけは、左ヒジを打撲していたのに、人数が足りないからと無理矢理連れて行かれた北海道で、初日3ホール目くらいにバンカーで大ダフリをやって、更に左ヒジを痛めクラブが握れなくなり、途中リタイヤ。
翌日は、性懲りもなくゴルフに出かける友人と別れ、美術館と円山動物園のシロクマを見物して時間をつぶす、という何のために北海道に行ったのか分からないことまでやってのけた。
もうやめだ~。終了~~~~!
とおもって、S弁護士はゴルフなんぞ記憶の片隅に追いやっていたのですよ。
ところが・・・・。
(つづく)