3月11日・日弁連臨時総会の執行部議案について~2~

(続き)

 ①の質問については、もともと修習手当という費目で予算にあげられているものであり、給費制と同じものを目指していくという回答であり、従前給費制と呼ばれていた制度と全く同じものの獲得を強く目指していくのか、修習手当という名目で幾ばくかの経済的援助で妥協しても良いという姿勢なのか、そこのところはよく分からなかった。

 ②の質問に対しては、私の記憶では、「1500人と言っているのは日弁連だけであり、1500という数字が入ったのは日弁連の活動の成果である。まだ1500人に反対する人達も多い中、1500人の達成も出来ていないのに、1000人という決議をしてしまうと、そっぽを向かれてしまう。国の制度を変えるのだから簡単ではない」との回答だった。

 この会長の回答には疑問があった。
 まず、これまで日弁連はロビー活動をして来た成果だと言うが、本気で取り組んでいるとは思えない。国の制度といっても結局は政治家・財界・マスコミの意見が大きく反映されるのだから、そっち方面にも働きかけてしかるべきだ。

 例えば、政治家もマスコミも弁護士は仕事を掘り起こせというのだから、ⅰ弁護士が余ってきていることもあるので、弁護士会が公開株式を1単位ずつ保有して、不祥事報道が発覚すれば直ちに弁護士でチームを組んで株主代表訴訟を提起する、そのための組織作りを検討する、ⅱマスコミの報道を逐一チェックする組織を弁護士会内に設け、人権侵害があれば直ちに提訴する、そのための組織作りを検討する、と発表するだけでも、財界・マスコミから弁護士増員反対の論調を引き出す可能性はあるはずだ。

 経済同友会なんか集団的消費者被害回復に係る訴訟制度が問題になっただけでも、 「日本は、自助・共助、それに基づく私的自治によって紛争を解決してきたからこそ、先進国中においても画期的に訴訟の少ない社会になっていると考えられる。安倍首相は、自助と共助が日本の伝統であり、今後も重視すべき価値観である旨指摘しており、この面からも安倍政権の目指す方向性と本制度(集団的消費者被害回復に係る訴訟制度)の導入が整合的かどうか検討すべきである。」と意見していたくらいだから、すぐに増員反対の意見を出してくれそうだぞ。

 政治家の不祥事に対する法的追及の組織でもいいかもしれない。最近流行のコンプライアンスにも合致するし、仕事を掘り起こせって言われていることに素直に従っているだけだから、本来なら何ら問題はないはずだ。しかも、従事する弁護士のスキルアップにもなるし、良いこと尽くめじゃないか。内々の話をすれば、株主代表訴訟は株主側が勝つ確率がそう高くはないから、会社側弁護士にとってこそ美味しい事件となるはずだ。
 

そもそも、政治家、財界やマスコミが弁護士は仕事を掘り起こせと言いつのるがそれは、自分に向かって矢が飛んでこない限度での話だ。弁護士が増えれば自らに矢が飛んでくるかもしれないということを分からせてあげないと、論調は変えられないだろう。
 日弁連が本気ならそれくらいしてもおかしくはないだろう。単に頭を下げてまわるだけなんて本気で戦っていない証拠なんじゃないのか。

 ③の質問に対する回答は、私の記憶では、いろいろ業務拡大は、やっている、弁護士としての魅力をアピールし、司法試験合格率を上げれば志願者は戻ってくる。というものだったと思う。

 果たして本当か。費用も時間もかけて取得した資格でも、資格を生かす仕事が来なくて食いっぱぐれるくらいなら、企業に就職した方が良いに決まってる。賢い人ほど費用対効果を計算するだろう。

 また、法科大学院堅持を言うなら司法試験合格者は多い方が良いに決まっている。その反面、司法試験合格者1500人への減員を言うのは、二律背反に近い。どちらかが本気でないとしか思えない。日弁連が法科大学院を放棄するとは思えないから、本気でないのは、司法試験合格者減員だとしか思えない。

 しかも、合格率が上がれば志願者が戻ってくるなんて、どれだけ安易な考えだ。あきれて物も言えん。前にも言ったが宅建資格だけで独立するのは難しいといわれているが、仮に宅建大学院に数百万円かけて3年間通えば95%で宅建資格が得られるという制度を創っても、誰も宅建大学院に行かないだろう。費用対効果が望めないからだ。だからどれだけ合格率を上げたところで、法曹資格に魅力が戻らない限り法曹志願者は増えないと考えるべきだ。
 業務拡大だって、遅々として進んでいないじゃないか。少なくとも増員のペースに見合った業務拡大なんてどこにある。あるなら示してもらいたいものだ。

 ④に関しては、理事会決議にそって必死でやっているとの回答だった。しかし、今回の執行部提出議案は、理事会決議「司法試験合格者をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況とを検証しつつ対処していくべき」とあるが、更なる減員に関する後半が抜け落ちており、理事会決議よりも司法試験合格者の減員に関しては、後退していると言える。それで必死にやっていると胸を張られても、納得は出来ないね。

(続く)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です