吉戒顧問
・今、改めて法曹養成制度について考えてみますと、やはりほかの顧問もおっしゃいましたように、法曹人口の問題に思いをいたさなければいけないだろうと思っております。この検討体制で行うべきことは閣僚会議の決定で決まっておりますが、これを見ますと、法曹人口につきましては、必要な調査を行って、その結果を公表することになっているわけでございます。先ほど来から説明がございますように、法曹人口については司法試験の合格者数について、平成22年度までに3,000人程度を目指すという目標があったわけでございますが、結果的に見ますと、需要と供給のミスマッチが生じております。私としては、この目標は少し多すぎたものと考えております。いろんな要素を考えながら、段階的に増加することが適当だったのではないかという思いがあります。いずれにいたしましても、法曹人口について考えるに当たりましては、やはりしっかりとした実証的なバックデータとなるような調査を是非していただきたいと思います。その観点から、推進室にはどこまでそれが可能かよく検討してもらいたいと思います。
(坂野のコメント)
さすが元東京高裁長官というべきでしょうか。先の司法審の法曹人口激増策が、きちんとした実証的データに基づかず、諸外国と比較して法曹人口が少なすぎるとか、せめてフランス並みにとか、制度の違いや他士業の存在も無視して、感覚だけで突っ走った反省を踏まえて、実証的データとなる調査をした上できちんと検討すべきだと提言されています。欲を言うなら、裁判所からもっと早く、的確に、問題点を指摘して頂いておれば、このように手遅れに近い状態になる前に歯止めをかけられたかもしれませんが。
・法科大学院教育につきまして既に様々な課題が指摘されておりますが、期待されたような成果が上がっていないのは現実でございます。司法制度改革の理念は幅広い視野を持った多様な人材の輩出だったと思いますけれども、その象徴ともいえる未修者の合格率が低過ぎます。その原因は何か。そして、その改善策はあるのだろうかと思います。文部科学省も様々な政策を実施するとされておりますが、是非効果的な政策を打てるように推進室と連携しながら工夫を重ねていただきたいと思います。
(坂野のコメント)
法科大学院が全体としての制度としてみれば、期待はずれであったことは、もはや誰の目から見ても明らかなのでしょう。未修者の合格率が低すぎるのは、簡単にいえば、あまりに法曹を目指すために必要なリスクが高すぎ、且つそのリスクに見合ったリターンが期待できなくなってきたことから優秀な人材(志願者)を集めることができておらず、また法科大学院の教育能力が一部法科大学院を除いて、欠けているからでしょう。
仮に、自動車のエンジンについて十分研究してきた学者が、これまで私は自動車について十分研究してきたから大丈夫だと言い張っても、運転免許も持たず(司法試験合格経験もなく)、公道で自動車を運転したことが一度もないならば(実務経験もないならば)、素人に運転技術の基礎(理論と実務の架橋)を教えることは無理でしょう。
ところが、法科大学院は、それをやれると言い張り、今もその考えは変わっていないようなのです。