常議員会で、育児期間中の日弁連会費減免についての意見照会が議論された。
日弁連は、育児期間中の会員に対し性別を問わず、休業を要件とせずに6ヶ月(出生した子供が2人以上の場合は9ヶ月)の会費免除を行う規定を準備しているという。男女共同参画推進に必要なのだそうだ。
説明委員のお話では、日弁連会費収入に与える影響は約1.5%程度と軽微であるとのことであった。具体的な金額は分からないが、日弁連はきちんとシミュレーションしているはずだとの説明があった。
ただでさえ、弁護士会費はバカ高くて、最近では若手会員の収入減少傾向から、若手会員への会費軽減措置がとられている状況にある。訴訟件数が減少傾向にありながら弁護士激増は止まっていないので、今後も今まで通りにバカ高い弁護士会費を会員が継続的に負担しつつづけることが可能なのか、少なくとも疑問を持っても良い状況だと私は思っている。会費がきちんと納入されないのであれば、弁護士自治だって不可能だ。
配付された資料をよく見てみると、弁護士会会員の増加を年間1805名とするというシミュレーションが記載されていた。その後に、「平成22~26年度は司法試験合格者数2000名程度を前提に新規登録者数を1805名とし、2015年度以降は同合格者数1500名程度を前提に、新規登録者数を1330名とする」との記載が、横棒線で消されていた。この消されたシミュレーションの方がよほど将来実現しそうな数字に私には思えるが、何らかの理由で、そちらは採用しなかったということらしい。
あれほど頭の硬い法曹養成制度改革審議会が、司法試験合格者年間3000名は現実性を欠くとして、その目標数値を撤回するよう発言し始めている昨今、現状の司法試験合格者数を前提にシミュレーションするなんて、そしてその人達が必ずバカ高い弁護士会費を支払い続けてくれるなんて、楽観主義にも程があるんじゃないだろうか。
しかも、その楽観数値を元にシミュレーションした結果、年間1億円弱の会費収入減となる数値、しかも年々その額は増加するという数字が出ていた(非常に小さい字で極めて読みにくい資料であった)。
これでは、空港誘致のために乗客シミュレーションを操作して採算が取れるように見せかけるやり方とあまり変わらないのではないか。普通の企業でも、計画を立てる際には楽観シナリオ、通常シナリオ、悲観シナリオを作成すると思うが、楽観シナリオだけしか出していないように見える。
そもそも、本当に男女共同参画が重要なら、年間1億円弱、弁護士1人頭年間3000円程度を、今の弁護士会費に上乗せして子育て支援のために徴収する、という会費増額提案をする方が、よほどストレートなやり方ではないだろうか。
私は、この日弁連の提案に基本的に賛成する内容である大阪弁護士会の回答には賛成できなかった。前提となるシミュレーションがいい加減だし、一度免除規定を作ってしまうと容易に撤廃ができないから今後の日弁連運営に大きな影響を与えかねないと考えられたし、さらに、子育てしながらしっかり稼げる弁護士もいるはずなので、そのような方への支援までは不要だと思ったからだ。
本当に支援が必要な場合、例えば、子育て期間中と前年度を比較して子育てが原因で当該弁護士が減収になっている場合、一度納めた弁護士会費を還付するという、より会費を無駄にしない支援方法も十分あり得るように思う。
しかし、常議員会では、保留は私を含めて2名、他全員の賛成で日弁連の案に基本的に賛成する意見を出すことに決まってしまった。
弁護士会の収入が今まで通りに入ってこなくなるかもしれないという危機感を、ほとんどの常議員の先生方は持っていないのかもしれない、と思った。
それにしても、弁護士という人種は、男女共同参画という言葉にはめっぽう弱い。