日弁連会長選挙は前回に引き続き、異例の再投票となりましたが、速報によると、再投票でも決着がつかず、選挙を最初からやり直す再選挙が行われるようです。
速報によりますと、得票数と獲得単位会数は、
山岸 候補 8557票(14単位会)
宇都宮候補 7485票(37単位会)
だそうです。
日弁連会長選挙で当選するためには、得票数が最多であるだけではなく、最多得票を得た単位会が18単位会以上必要なのです。
この規定は、圧倒的多数を占める大都市圏の弁護士会だけで日弁連を牛耳ることを防ぐ目的だと考えられます。(なお、東京・第1東京・第2東京・大阪の4大単位会だけで、約59%の弁護士が所属しています。)
ちなみに、この4大単位会だけで比較すると、次のようになります。
山岸 候補 5832票
宇都宮候補 2911票
このように、いかに山岸候補が4大単位会で票を稼いでいたかが分かります。まあ、これまでの、日弁連会長は、ほとんどがこの4大単位会出身者に占められており、それだけ旧来の派閥主流派が未だに力を保持していることの裏返しでもあるように思います。
逆に言えば、宇都宮候補は地方での得票で、東京・大阪でつけられた差をかなり挽回したということになります。
結局、この選挙では決着がつきませんでしたので、候補者選びから再スタートということになる再選挙が行われるようです。どなたが出馬されるか分かりませんが、おそらく、宇都宮候補も山岸候補も再度立候補されるでしょう。
このように持久戦模様になると、浮動票が選挙に関心を失えば、 派閥による組織票が見込める山岸候補の方が有利ではないかとも思われます。
ここで疑問となるのは、どうして、大都市圏で山岸候補が強いのか、派閥の組織票があまり崩れないのか、ということです。
これまでは、ほとんどの場合、4大単位会から日弁連会長が選ばれてきました。ですから、日弁連会長のポストを狙う方は、この4大単位会に入り、その単位会の派閥の中で、一所懸命に雑巾がけを行って、派閥内の地位を高め、推薦してもらってきたようです。日弁連会長選挙において、このような派閥支配が崩れてしまうと、日弁連会長を夢見て雑巾がけに長年いそしんできた方の努力が、水泡に帰す可能性があるのです。だからこそ、必死になって派閥の締め付けを行い、票を固めるのです。
そこには、自らの目指す会長ポストが頭の大部分を占めており、全弁護士のためという理想はあまり見当たらないように思われます。もちろん、派閥によって当選させてもらった以上、派閥を裏切ることは出来ません。当然従来路線(無派閥で当選した宇都宮執行部以前の路線)の継承しかできない執行部になっていきます。
この点、山岸候補は東京弁護士会の派閥主流派候補です。当然、東京弁護士会の派閥の意向に逆らえません。東京弁護士会の司法試験合格者に対する態度は、1500名は仕方がないがそれ以上の合格者減の提案は認めないという態度です。法曹人口政策会議に、東京弁護士会の意見が出されているので間違いありません。したがって、山岸候補が当選すれば、支援してくれた東京弁護士会派閥主流派に逆らえませんから、どんなに頑張っても1500名止まりの提言しかできないことは明らかなのです。
しかも、前回の日弁連会長選挙において、選挙時には「司法試験合格者減員も視野に」、と語った、派閥主流派のY候補が、選挙で負けたとたん、雑誌で、「やはり司法試験合格者は増やすべきだ」と語るなど、派閥主流派は平気で選挙目当ての「あめ玉ばらまき作戦」が出来るようなのです。
再選挙は一体、どうなるのか、旧来の派閥主流派路線に戻すべきと考えるのか、宇都宮執行部による無派閥での改革路線を継続するのか、日弁連会員、特に多数を占める若手の判断が注目されます。