見えにくい成果

 おそらく、国民の皆様にはどうでも良いが、弁護士にとっては大事な、日弁連会長選挙が近づいている。

 他にも様々な争点があるが、私の興味がある弁護士人口の激増問題については、宇都宮・尾崎・山岸の3候補(50音順)が、まずは司法試験合格者1500人、更なる削減も視野に入れるというおおまかな公約では一致、森川候補が500人を掲げるようだ。

 旧主流派の候補(尾崎・山岸、両候補)も司法試験合格者を1500人に削減すると公約しなければ、前回の山本候補のように正直に削減目標を言えない状況となり、落選する危険が高まるため、争点つぶしの意味もあるのだろう。

 私の記憶では、日弁連法曹人口政策会議では、当初、H23年3月末までに中間答申に基づき緊急提言を行い、その後、半年ほどで、最終とりまとめを行い、宇都宮会長任期内に、実際的な活動に入る予定だったはずだ。

 しかし、未曾有の大災害が勃発し、日弁連としてもその対応に追われたため、法曹人口政策会議も大幅に予定が遅延することになった。

 震災の対応を先に行ったことそれ自体は、日弁連として正しい対応だったのだが、その結果、「法曹人口問題で、宇都宮候補は大した成果を上げられなかった」と、弁護士一般には誤解されているようだ。 

 しかし私自身は、宇都宮会長でなければ、現在各単位会に意見照会されている司法試験合格者1500人の提言案すらまとめられなかっただろうと思う。

 司法試験合格者減少を公約にして、大阪弁護士会会長選挙を勝利した上野元会長の下で作られた法曹人口問題PTが、その次の会長の際につぶされ、その後、何度か常議員会で、同様のPTを作るべきと進言したが、一顧だにされなかったことからも分かるように、トップにやる気がなければ、その問題自体を討議しないことも出来るし、宇都宮会長以前の日弁連の法曹人口問題に関する会議のようにイエスマンばかり集めて形だけの会議を構成し、実質的には何もやらないことも、実は出来てしまうのだ。

 そうやって実質的に公約をサボタージュしても、実際には非難されにくい。任期はわずか2年(大阪の会長は1年)だから、時間がかかって出来なかったという言い訳が可能だからだ。

 会議が紛糾することも厭わず、広く、公平に委員を選抜し、集中的に議論させたのは、執行部としても相当な労力を費やさざるをえない仕事だったはずだ。

 旧主流派の会長であったなら、司法試験合格者減少提言は、旧主流派の推進してきた司法改革万歳路線の変更だから、これまで日弁連の主流であった派閥の重鎮たちに対し、「あなたのとった施策は間違っていました」と、面と向かっていうようなものである。しかし、実際には、とても言えなかっただろう。選挙は派閥の力で勝たせてもらっていた面も当然あり、その結果、派閥の重鎮に頭が上がらないはずだからだ。

 そこを敢えて、実行できたのは、やはり旧主流派というしがらみに全く縛られない宇都宮会長だったからだろう。

 確かに宇都宮会長の法曹人口問題に関する行動は、見えにくい成果ではある。しかし、これからも一歩ずつ日弁連を変え続けていくには、派閥などのしがらみに縛られない必要は、やはり最低条件として、あるのかもしれない。

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