未だにTPPの全貌が国民に明確になっていないのに、野田首相は前向きに検討するとの報道が流れている。菅前首相は、第三の開国といっていたが、果たして本当に日本は開国していないのか。
JETROの統計によると、日米の平均関税率は次の通りらしい。
農産物 日本21.0% アメリカ4.7%
鉱工業品(非農産品) 日本2.5% アメリカ3.3%
電気機器 日本0.2% アメリカ1.7%
(そのうちテレビ) 日本0% アメリカ0~5%
輸送機器 日本0% アメリカ3.0%
(そのうち乗用車) 日本0% アメリカ2.5%
化学品 日本2.2% アメリカ2.8%
繊維製品 日本5.5% アメリカ8.0%
非電気製品 日本0% アメリカ1.2%
この数値から見れば、確かに農産物については関税の高さは否定できないが、関税に関して、アメリカより、よほど日本は開国している。
しかし農産物の関税による保護は、特に食料自給率が低い日本では、国民の生命線だ。
仮に世界的な不作に見舞われた場合にどれだけお金を積んでも、農産物輸出国は、自国民への供給を優先するだろう。国家が国民を保護することは、当該国家において絶対の正義だからだ。自国で食料を賄えることと、外国から食料を買える可能性は、全く別物と考えるべきだ。
また、仮にTPPに参加して、数パーセントの関税を撤廃したとしても、円高がすこし進めばその恩恵は一気に吹き飛ぶ。5年前1ドル120円ほどだったレートは、いまや、1ドル77円前後だ。円高対策の方がよほど輸出企業の収益にプラスになるように思うのだが。
韓国が輸出国として成功しているのは、国家をあげてのウォン安政策が功を奏し、価格競争で日本に勝っているから、という面が大きいはずだ。決して韓国と米国がFTAを締結したからではない。
マスコミはこぞってTPPは参加に邁進すべきという論陣を張っているように見える。しかし、マスコミが一致して一つの方向を目指すときこそ、きちんと立ち止まって、自分の頭で考える必要があるときだ。
マスコミは、一致して戦争へと国民をあおったこともある存在なのだから。