大阪弁護士会次期執行部の方の公約(2)

 先日の続きになります。

木村圭二郎 次期副会長(会派:春秋会)

 弁護士を取り巻く急激な環境変化は、特に経済的側面において、若手弁護士を直撃し、弁護士の将来に強い危機感を生じさせることとなっています。弁護士が職業としての魅力を失うことは、弁護士の利害だけに関わるものではないことは明らかです。弁護士の職業としての魅力の喪失は、法曹界への有為な人材を集めることが出来ないことを意味し、それは、司法界を揺るがす大問題です。
 (中略)弁護士会は、急激な法曹人口の増加の負の影響を相殺すべく、当面の司法試験合格者の数を減少させ、同時に、司法改革の理念実現のための前提条件の整備に力を尽くすべきだと思います。

松本 岳 次期副会長(会派:一水会)

 大量増員に見合うだけの法的需要が開拓されていない現実があります。法律相談件数や訴訟事件数がここ数年の間に飛躍的に伸びたという報告はありませんし、裁判官や検察官の増員も実現していません。法律事務所への就職難は年々顕著ですし、企業、役所への修習生の就職も進んでいません。
 このような法曹実務家に対する需給ギャップの現実を踏まえると、司法制度改革審議会が目指した法曹人口の短期間での増員に無理が生じていることは明白ですし、弁護士の経済的基盤の劣化が各年代で進んでいる現状では、新規合格者の減員を求めるほかないと考えます。ただ、数字を示して具体的な減員要求を行うかどうかは質の維持を前提として日弁連が繰り返し行ってきた弁護士人口に関する決議の経緯を踏まえ、慎重に検討すべきものと思います。

増市 徹 次期副会長(友新会)

 (司法改革の)理念実現のためには法曹人口の増大も不可欠です。しかし他方、弁護士急増による就職問題、弁護士登録に至るまでの経済的負担の問題等が深刻化し、法科大学院の志願者は近時大幅に減少しています。このような司法改革に伴う「ひずみ」により万が一にも弁護士が疲弊し、その使命を担う力まで失うようなことがあってはなりません。司法改革の目指す制度基盤整備の拡充に力を注ぐことが必要です。(中略)他方その間、弁護士人口増加のペースを落とし、修習生の給費制の恒久化を目指すとともに(中略)様々な手段を講じる必要があります。

 各副会長の仰る詳しい内容については、大阪弁護士会選挙公報をご覧下さい。

 個人的に言えば、司法改革が言われて10年、どれだけ司法制度制度基盤の整備が出来たのか、今後迅速にその基盤整備が出来るのか、大いに疑問はあります。例えば基盤整備の一つとして民事法律扶助制度の抜本的拡充があげられることが多いのですが、この厳しい国家財政のもとで、どれだけ実現できるのでしょうか。

  以前私のブログに書いたとおり、平成21年度の日本司法支援センターの資料を見ると、民事法律扶助事業経費として支出予定の予算額は、わずか139億8400万円です。弁護士数2654名のローファームであるクリフォード・チャンスの売上約2000億円の約15.75分の1の予算しか、全国民の民事法律扶助のためには、つけられていないのです。この貧弱な司法基盤が、抜本的に拡充されるだけの余裕が国家にあるとはあまり思えません。

(続く)

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です