総務省~法科大学院の評価に関する研究会報告4

 さらに、続きをご紹介します。研究会委員は、新司法試験制度にもかなり批判を加えている様子です。ただし、若干誤解が見られる点が残念な気がします。→以下は、たまりかねた坂野の個人的意見です。

【新司法試験について】

①制度設計について

・政府として3000人合格の目標を掲げたのに2000人しか合格しないといういことは、一定の能力に達しなければ、上位3000人に入っても合格しないということになり裏切られた気になると思う。政府の対応として誠実さに欠けるのではないか。

→資格試験であれば当然その資格に相応しい実力を示さなければ合格しないはず。最初に合格者数ありきの発想であり、新司法試験が資格試験であることを失念しておられる?

・受験生にとっては、合格者数を決めた上で試験が行われているように見えている。

・旧司法試験制度は、裁判官や検察官として有すべき能力を判定するとの観点が強かったのではないか。弁護士を目指す人は多様な勉強をして短期間だけ司法試験の勉強をし、裁判官など訴訟中心に行う人は少しグレードの高い能力を身につけるような勉強をするなどしても良いのではないか?

→例えば刑事裁判で、検察官と渡り合うときにグレードの低い弁護士で良いのでしょうか。在野法曹の重要性をもう少し認識して頂ければ助かるのですけれど。

・日常生活で必要とされるベーシックな法律論等の問題を中心とした試験内容とすれば法科大学院修了者の7~8割が合格する用になり、法曹人口の拡大も図られ、別に誰も困らないのではないか。

→日常かかる風邪などだけ治療できるような、医師国家試験にすれば、医師不足も解消され、別に誰も困らないのではないか、というのと同じでかなりの暴論ですね。

・ 働きながら経済的にもあまり負担にならないような形で法科大学院で勉強し、司法試験に合格するのが理想だと思うが、原稿の試験では難しいのではないか。

②試験方式、内容

・新司法試験は資格試験か、競争試験かきちんと整理することが必要。資格試験であるとすれば、それに見合った試験問題とすべき。

→今ではすでに競争試験=熾烈、ではなく、事実上2000人合格させる競争試験なので、資格として相応しい実力がなくても合格できている可能性が、採点者らの雑感で指摘されています。

・国民が法曹に求めるニーズは何か。新司法試験の内容は市民のニーズを踏まえた者となっているのかという観点からの議論はあまり行われていないのではないか。

・試験科目の比重が社会的ニーズを踏まえたものとなっていないのではないか。

(続く)

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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