国選弁護の問題点

 保釈とは、簡単にいえば、逃亡しない保証として保釈金を積み、身柄拘束から解放してもらうことである。仮に保釈金が積めたとしても裁判所が認めない場合もあるのだが、身柄拘束から解放してもらう利益は自由を奪われている被告人にとっては極めて大きいとも言える。

 ただし、保釈金は、犯罪にもよるがそこそこの金額になることが多い。先だって有罪判決を受けて再度身柄拘束された押尾学氏が、起訴後に保釈されたときの保釈金額は、報道によれば400万円だったそうだ。

 さて、ある国選事件の被告人である。確か、貧困で弁護人に依頼できないという理由で、国選弁護人を依頼していたはずだった。

 「どうしても保釈して欲しいって、いうけど、保釈金積めるの?100~200万円くらい要るかもしれないよ。」

 弁護士としては当然の質問である。

 ところが、貧困を理由にしていたはずの被告人はいう。

 「私の△△を解約すれば○00万円くらいはありますので大丈夫です。」

 結局この被告人は、国選弁護人が保釈請求書を作成し、保釈金を積んで保釈となった。

貧困を理由に国選弁護を依頼する際には、自らの資力を申請しなければならず、虚偽の申告をすれば過料の制裁もある(刑訴法38条の4)。政令で定められた資産の基準は50万円でありこれを超える現金・預貯金を有する者が国選弁護制度を利用するためには、まず資力申告の書面を提出し、私選弁護人の紹介手続を経なくてはならない。

 しかし資産があれば必ず私選弁護人を選択しなければならないというわけでもないから、国選弁護制度を利用できてしまう場合もある。

 また、△△の解約返戻金は、政令で定められた資産とはされていないようなので、今回の被告人は資産がゼロということで、悠々と国選弁護を受けることが出来る。○00万円の実質的資産を持ちながら、貧困などを理由に国選弁護制度を利用できてしまうのである。

 この場合、仮に有罪判決となり、訴訟費用を負担させられるとしても、通常の私選と比較してべらぼうに安い(ひどい場合は10分の1未満)の国選弁護費用ですむ可能性が高い。適正なサービスを受けるためには適正な費用が不可欠なはずなのだが、ここでも真面目にきちんと弁護する弁護士は、適正なサービスを提供しながら適切な報酬をもらえず、その分、自腹を切らされることになる。

 確かに、国選弁護事件は、熱心に弁護してくれるかどうかは弁護士次第(とはいえ、多くの弁護士は熱心なはずだ。)という面もあるし、弁護人自体を自分で好きに選ぶことも出来ない。

 しかし、「身柄拘束から解放されるためには金を払うが、弁護してもらう弁護士には基本的には報酬を払いたくない、可能な限りボランティアでやってくれ。」、という結果を招く可能性がある現行制度(そしてその維持に弁護士のボランティアを不可欠の前提とする制度)は、やはり問題があるように思われる。

 他人に頼らずに自力で、保釈金を積める被告人には、(当然逃亡せずに裁判を受けて結果が出れば返してもらえる)保釈金の還付の際に、せめて、弁護士会基準での弁護士報酬を請求できるようには出来ないものか。

 だって、現実に、それだけのサービスを受けているんだから。

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