日経新聞コラム「大機小機」

 2010年9月4日付、日経新聞朝刊の「大機小機」に、「司法試験合格者数と職域問題」との題名でコラムが掲載されている。

 まあいつも通り、弁護士の活動領域は多くあるのだから、もっと努力しろ、弁護士側から合格者削減をいうな、という論調である。

 このコラムを書かれた「腹鼓」氏は、こう述べる。

 「企業や行政の内部で弁護士が活躍できる余地はいくらでもある。」

 果たして、腹鼓氏は本当に、企業・行政内部にその余地がいくらでもあることを、実際に調べた上で書いているのだろうか。

 もし本当に企業や行政内部に弁護士の活躍余地がいくらでもあり、企業や行政が弁護士雇用を望んでいるのなら、どうして、もうすぐ弁護士になる(可能性が極めて高い)修習生を争って雇用しないのか。まだまだ、修習生の就職は困難を極めている。

 現状では、いくらでも新人弁護士を雇用可能なのだ。

 実際に、関東のいくつかの弁護士会では中小企業等に弁護士雇用の可能性をリサーチしたが、そのような余裕はないという中小企業がほとんどだそうだ。大阪でも、社員にボーナスを出せない中小企業が半数近くになるといわれているのに、どこにニーズがあるのだろうか。

 日弁連のシンポジウムでも某地方自治体の方が、弁護士を雇用する見込みはないといっているのだが、そのようなことも、腹鼓氏にかかれば、緑の地平に見えるのだろうか。

 腹鼓氏が、弁護士の活躍できる余地があると言い張るのなら、弁護士を求めている企業・行政を具体的に日弁連に教えてやってもらいたい。おそらく具体的な内容は、少なくとも「いくらでも」というレベルでは、明示することはできないだろう。

 腹鼓氏が、論じているのはニーズではない、活躍の余地の話だと言い逃れるのであれば、このコラムは何の意味もない。就職氷河期で就職できない大学生に向かって、大学卒業者の活躍の余地はいっぱいあるといってどんな意味があるというのだ。ポスドク問題で就職できないドクターに活躍の余地がいっぱいあると言っても、現実的な就職問題の解決はもちろん、何の慰めにもなりはしないではないか。

 企業に弁護士の活躍の余地がいくらでもあるのなら、何より日経新聞にどれだけの弁護士が雇用されているのか明らかにして欲しい。さぞかしたくさんの弁護士を雇用されているはずだ。なにより、日経新聞だって企業なんだし、企業に弁護士の活躍の余地はいっぱいあるはずなんだろうから。

 日本組織内弁護士協会の最新の資料によると、日経新聞は採用数上位20位に入っていないから、少なくとも4人以上の弁護士を2009年下半期には採用していないようにみえるのだが、事実はどうなんだろう。

 資料から分かるとおり、現実の企業の弁護士ニーズ~活躍の余地とほぼ重なるだろう~は、微々たるものだ。もし、日経新聞が弁護士をひとりも採用していないのなら、いい加減なことを言うなと批判されても仕方ないように思うのだが。

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