2 国際化した弁護士会(ドイツの状況)
ドイツは、かつては日本と同じような弁護士制度を有していたが、欧州域内の市場統合、東西ドイツいの併合、東欧の自由化等の環境激変により、英米のローファームに対抗してこれらの新しい市場に進出する必要から国際化するために、弁護士への規制を緩和した。
その結果、ドイツ国内の法律事務所の国際化は大きく進展したものの、ドイツ国内の大事務所の殆どが英米系ローファームの傘下に組み込まれることになった。
日弁連宮﨑前会長は、国際競争力を高めるために弁護士の急増も止むなしと受け取れる発言を、大阪弁護士会春秋会の会報でされていたようだが、私には、相当前からドイツでは、タクシードライバーをしなければ食っていけない弁護士も急増していると、報道されていた記憶がある。経済的に疲弊しきった弁護士達が溢れたドイツに、英米系ローファームが参入するのだから、英米系ローファームがドイツの法律事務所を傘下に組み入れることは極めて容易だったはずだ。
英米系ローファームの参入により、ドイツの企業・一般国民のリーガルコストがどれほど上昇したか、どれだけ英米系ローファームがドイツ国民の人権に役立つ活動をしているか、聞いてみたいところだが、私の知る限りそのような資料・調査はないようだ。
しかし、IP(インターナショナル・パートナーシップ)の下で、儲けるために進出してきた英米系ローファームに組み込まれたドイツ人弁護士が、ローファームの儲けを中心に措かないでどれだけ、ドイツ企業のため、ドイツ人の人権擁護のために働けるのか、また仮にドイツ人のための人権擁護活動が、現在可能であっても、将来的に英米系ローファームがその人権活動を容認してくれる保証はあるのか、私の疑問は尽きない。
(続く)
※この連載は、大阪弁護士会会長金子先生のレジュメをもとに、私個人の意見を含めて記載しております。金子先生のレジュメは、この連載終了後に掲載する予定です。