進みつつある司法占領?金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその4

 では、他の国と日本ではどのような考え方の違いがあるのだろうか。

 諸外国に対し大手ローファームを進出させているイギリスを例にとって事情を見てみると、次のような特徴が挙げられるそうだ。
① 法律事務所のパートナー(共同経営者)には、非弁護士(例えば経営の専門家)もなれる。
② 法律事務所を弁護士でない者が所有できる。
③ 法律事務所を株式会社の形態で運営でき、もちろん上場もできる。
④ MDP(異業種間共同経営)も認められる。

 以上のように、法律事務所が利益を追求するには適した特徴が認められている。特に、株式会社形態という利益追求の最高度を極める結社の形態で、法律事務所を運営できるのであれば、その法律事務所の目的はただ一つ、利益の追求になり、それ以外の目的は考慮されないだろう。
 つまり、弁護士業を完全に金儲けの手段として使うための制度が整っているということだ。
 

 最近では、イギリスソリシター(事務弁護士)規制当局は、2008年12月に、依頼者の同意がなくても同じ事務所内で、情報遮断措置をとれば、同一案件の相手方を代理することができるし、守秘義務違反にもならないという提案をしているそうだ。

 つまり、AさんとBさんが土地の境界で争っているときに、P法律事務所のX弁護士がAさんを代理し、同じくP法律事務所に属するY弁護士がBさんの代理をしても(情報遮断措置がとれれば)良いではないか、という提案である。
 しかし、情報遮断措置が脆弱なら、一方の弁護士が相手の弁護士のパソコンに侵入し保持している証拠を盗み見て、自らに有利に訴訟を行うことが可能になる。もっとひどい事態を想定すれば、X弁護士とY弁護士がつるんで、お金持ちのAさんを勝たせて、Aさんから多額の報酬をもらって、事務所全体でがっぽり儲ける訴訟を行うことすら可能になってしまう。

 このような、イギリスの弁護士の倫理が、紛争解決の最後の手段である司法において相応しくないことはいうまでもないだろう。当事者が一個人であれ、大企業であれ、法律の名の下に平等に扱われるべき場所が司法だからだ。

 日本の弁護士は、弁護士法1条により「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を目的と定められている。弁護士会も強制加入団体であり、弁護士倫理、行動規範については司法を担う一翼としての矜持をもった制度設計がなされている。このように、日本の弁護士・弁護士会とイギリスの弁護士・弁護士会とでは、その生まれ育った土壌からして違ってきているように私は思う。

 金子会長の分析は、次に国際化の未来について行われる。(続く)

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