卒業旅行の季節

 岸和田の法律相談に行こうとしたところ、時間的にぴったりの電車がラピートβ(南海電車の関空行き特急)しかありませんでした。指定料金が500円かかりちょっと贅沢ですが、使うことにしました。

 車内の清掃が済むのをホームで待っていると、若い女性の5~6人組がはしゃぎながら、歩いてきました。おそらく、卒業旅行で海外に行くのでしょう。真新しいスーツケースを引っ張っている人もいます。とても楽しそうに見えました。

 私といえば、せっかく頂いた就職内定をお断りしたあと、大学を留年・休学しながら司法試験の受験を続けていました。結局、大学卒業といっても司法試験の勉強をしながら卒業式のあと、しばらく経ってから卒業証書をもらいに行っただけでした。

 女子学生の華やかな羽織・袴姿を見ることもなく、総長・学部長の式辞を聞くこともなかったのです。卒業したときも、「ああこれで学生ではなくなったんだ、これからは身分を証明してくれるところもないんだ」と自分が何物でもなくなったかのような不安だけがありました。

 ですから、司法試験に合格した後であっても、なんとなく、私が体験できなかった卒業旅行を楽しんでいる大学生を見ると、羨ましく思っていたのです。

 ただ、私も最近は、良い思い出になるようにいろいろ体験できるといいね、と思うようになりました。

 星新一さんのショートショートで、鍵を拾った男が、人生を掛けてその鍵に会う錠を探すという話があったように思います。

 (記憶がはっきりしませんが)確か、ずいぶん長い年月にわたり様々な錠を試したりしたあげく、最後に男は鍵に会う錠を自ら作ります。そして、部屋にその錠を掛けたとたん、どんな願いでも叶えるから望みを言いなさいと語りかける存在が現れます(間違っていたら済みません)。

 その男は、黙ってしばらく考えた後に、「私が欲しいのは想い出だけだ、でもそれはもう持っている」と答えた、というお話だったと思います。

 私も、少しだけ、その男の気持ちが分かる歳になってきたのでしょうか・・・・・。

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