「ごろごろにゃーん」  長新太 作

 私の実家では、私が小さい頃から福音館書店の「こどものとも」「かがくのとも」を定期購読していました。福音館書店は非常に素晴らしい絵本を数多く出版している会社です。どの子供も、絵本は大好きですが、私も例に漏れず、絵本が好きでした。

 好きな絵本はたくさんありますが、異彩を放っていたという面では、長新太さんの「ごろごろにゃーん」に勝る絵本も少ないと思います。

 たしか、最初と最後のページ以外は、「ごろごろにゃーん、ごろごろにゃーんと、ひこうきはとんでいきます。」という文章の繰り返しです。ページをめくってもめくっても、相変わらず「ごろごろにゃーん、ごろごろにゃーんと、ひこうきはとんでいきます。」の繰り返しなのです。

 おそらく、子供に読み聞かせるお母さんの側に立てば、すぐに飽きてしまう、文章でしょう。

 そんな絵本なら、子供も飽きてしまうのではないかと思われるかもしれません。しかし、決してそんなことはないのです。猫たちを乗せた飛行機は様々な冒険に巻き込まれます。ページをめくれば、前のページとは違う、新たな冒険が描かれているのです。子供達は、その冒険に夢中になるのです。

 このように子供達が、絵本の絵の力によって、夢中で冒険しているときに、むしろ言葉による説明は邪魔であると、長新太さんは考えたのかもしれません。だから、敢えて分かりやすく簡単な言葉の繰り返しで、子供達の想像の翼をじゃましないように配慮されたのではないでしょうか。子供達は「ごろごろにゃーん・・・・」と繰り返し読み聞かせてくれる、お母さんの暖かく柔らかい声音を聞き、その声に安心しながら猫たちと冒険できていたのではないかと、今になって思います。

福音館書店・840円

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