少し盛りを過ぎ始めていますが、金木犀(キンモクセイ)が良く香る季節になりました。
普通、花の香りは、香りを放つ花を中心に同心円上に広がっていきそうなものですが、不思議なことに、金木犀の香りは、一定の調子?で香ってくるものではありません。金木犀の香りだと思って周囲を見渡してみても、金木犀の木が見つからないこともしばしばです。かといって、金木犀の花の近くに寄ってみても、必ずしも香りが強くなるわけでもありません。そのくせ、鴨川の橋を渡っている際に、ある一瞬だけ強く香ってきたりします。
なんだか、金木犀の木が目に見えない香りの織物を、少し冷たい空気に気まぐれに投げかけていて、その香りの織物を人が通り過ぎるときにだけ、強く香るような、そんな感じがします。
私が司法研修所を卒業する朝も、金木犀が良い香りをさせていました。同じクラスのO君が、早朝に趣味のホルンを聞かせて下さったことを思い出します。朝の冷たい空気に、O君のホルンと金木犀の香りが妙に似合っていたように記憶しています。
O君は検察官になりました。
きっとご活躍のことでしょう。