「カチカチ山」って、あの狸とウサギの物語でしょ。日本昔話じゃないの?
・・・・と思われる方がほとんどだと思いますが、私が紹介するのは太宰治が自分流の解釈を加えて再構成した「カチカチ山」です。
太宰は、「カチカチ山」に登場する狸を愚鈍大食の醜男37歳、うさぎをアルテミス型美少女16歳になぞらえ、「狸はウサギに惚れていた」として話を進めます。その発想自体が常人では不可能なものであり、太宰の天才たるゆえんでもあると思うのです。
非常に面白い話なので、詳しくは実際に読んで頂くとして、太宰の結論は、「女性にはすべて、この無慈悲な兎が一匹住んでいるし、男性には、あの善良な狸がいつも溺れかかってあがいている。」というものです。
この太宰の結論には、女性は賛同されないかもしれませんが、おそらく大多数の男性は苦笑しながらも頷かざるを得ないのではないでしょうか。
この作品は、手に入りやすい所では、新潮文庫の「お伽草紙」に所収されています。「お伽草紙」には、他にも「吉野山」・「女賊」(特に女賊の前半の面白さは秀逸です!)など、読んでいてとても面白い作品が含まれており、お薦めの一冊です。