映画 「夢見るように眠りたい」

 私立探偵の魚塚甚(佐野史郎)と助手の小林のもとに、桔梗(佳村萌)という娘を誘拐されたので、誘拐犯からの謎かけを解いて、連れ戻して欲しいとの依頼が来る。その謎掛けとは「将軍塔の見える、花の中、星が舞う」というMパテー商会からの奇妙な暗号だった。桔梗を探すために活動を開始した、魚塚と小林だが、逆に身代金として渡されていた100万円を奪われてしまう。追跡を続ける魚塚は、次第に大きな流れにのまれていくように「永遠の謎」に巻き込まれていく。

 林海象監督が、第1回監督作品として制作したこの映画は、わずか83分の作品ですが、映画に対するとてつもない愛と想いが込められている作品のように思われます。この映画が制作された1986年当時は、私の出身地の田舎の方では、小さな街の映画館が次々とつぶれ、その後、ようやく少しずつ復興し始めた頃でもあり、映画界が(特に邦画に関して)元気を失っていた時代であったのかもしれません。その頃に、「忘れないで欲しい。映画はこんなにも素晴らしいものなんだよ。」と、映画を使って夢を紡いで見せたのが、この作品だったのではないかと思います。

 ラストシーン近くで、魚塚が「桔梗」と叫ぶシーン、桜の花びらが舞い散る庭のシーン、まるで穏やかな誰もいない海で、仰向きに泳ぎながら、水面下数メートルから空を見上げているように流れる音楽、 出来れば小さなオフシアターで、もう一度見てみたい映画です。

DVD 4700円(税抜)

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