森本会長、考え直して頂けませんか?! ~その2

 私が噛みついた、もう一つの執行部提案(正確には報告議案)は、次のような内容だった。

【人権擁護活動奨励賞】
 人権擁護活動を行う大阪弁護士会会員、大阪弁護士会会員が参加する団体に対して、大阪弁護士会が表章し支援することにより、当該人権擁護活動を社会に知らしめ、広範な人権活動を高揚させるとともに社会正義を実現することを目的とする。
 財源として事業戦略費(予算200万円)を用いるとのことだ。

 これまで、大阪弁護士会会員以外の人権活動について、大阪弁護士会は「大阪弁護士会人権賞」を制定して、表章と金一封・記念品の贈呈を行っている。

 それと同様の制度を作って、弁護士も表彰の対象にしようという制度だ。

 私としても「大阪弁護士会人権賞」の意義は分かるが、そもそも、20年以上実施しているものの世間にはあまり(殆ど)知られていないことから、目的である人権活動の高揚と社会正義の実現についての効果は明確ではないと感じており、費用対効果の観点からも、人権賞に関する会費支出についても、基本的には賛成ではない。

 さらに、弁護士に対してもそのような賞を設けて表彰しようというのが今回の森本会長の意向なのだが、私は真っ向から反対意見を述べた。

 理由は、既に人権保障活動をされている方は、人権保障の信念に基づいてその活動をされているのであり、そのような賞が創設されて弁護士会から表彰されようがされまいが、その活動に揺るぎはないと思われる。弁護士会が表彰してくれないなら人権保障活動を止めちまうぞ、というような功利的な人なら、そもそも人権保証活動に従事していないだろう。


 また、これまで人権保障活動をしてこなかった方が、このような賞が設けられたからといって、その賞を目当てに人権保障活動を突然やり出すという状況も考えにくい。何時表彰されるか(選んでもらえるか)分からない賞(しかも世間的に評価されるかさえも不明確な賞)を目当てに、基本的にはペイしない人権保障活動に注力するとは考えられないからである。

 だとすれば、こんな賞を設けても、多分現状は何ら変わらないのである。

 人権保障活動に従事しようという弁護士が増えるとも思えないし、社会正義の実現につながるとも思えないのである。

 法律でいうところの立法事実が見出せないのである。

 そればかりではない。
 事業戦略費を用いるというのも、引っかかるところである。

 事業戦略費は、その名前からすれば、大阪弁護士会が戦略的に事業を行う為の費用だと考えられる。事業戦略費を使うのであれば、非弁活動の取り締まり強化など、大阪弁護士会や会員に直接プラスになる見込みが高い事項に使うべきなのではないか。会長のやりたいことをやるために自由に使って良いお金なのか。

 また、他会でも似たような制度を実施しているというような資料も添付されていたように記憶しているが、他会を参考にするのなら、他会で徴収されていない国選・管財人・LACなどの負担金制度を止めるのが先じゃないのか。

 確かにこれまで、陽の光が当たりにくかった、人権保障活動に対して、努力されている方々の活動に光を当てたい、という森本会長の意図も分からなくはない。
 また、人権保障活動に尽力されてこられた方としては、表彰されれば評価されたということもあり嬉しいだろうということも否定はしない。

 ただ、そもそも大阪弁護士会は、人権保障活動に熱心に取り組んでいる委員会も多く、どの会員(団体)を選択するのかという点についても問題が生じかねない点を指摘する常議員の先生もいた。俺たちはA団体より絶対人権保障に関して頑張っているのに、どうしてA団体が表彰されて金一封もらい、俺たちには何もないのか、という思いを生じさせかねないということである。

 一応、自薦・他薦で応募する制度にはなっているが、選考委員会としても選考委員が良く知っている団体や会員を高く評価しがちになるだろうということは避けられないと思われる。

 私は、この制度を森本会長がどうしてもやりたいのなら、個人のポケットマネーでやるべきだと考えた。

 そうすれば、どの弁護士・団体が表彰されようと、会長の個人的な評価ということで済むので選考の問題もクリアできるし、会長のポケットマネーから金一封(事業戦略費200万円を、全額使いたいような説明だった)が支払われるのであれば、大阪弁護士会の会費の無駄遣いも避けられる。大阪弁護士会からの表彰であろうが、大阪弁護士会会長個人からの表彰であろうが、表彰された方が嬉しいのは、特に変わらないと思われる。そして、その表彰の結果、仮に人権保障活動の新たな展開がなくても、会長のポケットマネーなら弁護士会の財政にも影響しないので誰も文句は言わないだろう。

 

 実際、森本会長は、「確かに御指摘のとおり、選考の問題はあるが、私はやりたいと考えています。」という趣旨のお話しをしていたので、そんなに森本会長がやりたいなら、個人の負担ででやれば良いだけではないかと考え、反対意見に付け加えて、私は「そんなにやりたいのなら、会長のポケットマネーでやればいいじゃないですか。」と申し上げた。

 
 仮に会長のポケットマネーで始めて、この奨励賞の設置により人権保障活動が活発になることが分かったのなら、会費を使う正当性も出てくるだろう。

 私の意見に対して、別の常議員の先生から、「そういう問題じゃない」との反論もあったが、私はそういう問題だと思っている。

 弁護士会費は、支払わねば弁護士会から懲戒処分を受け、最後には退会させられるという弁護士にとって極めて重いくびきである。
 そうやって無慈悲に集めた会費を、使うのであれば、費用対効果も考えて会員にとってプラスになる可能性が高い使い方をするのが、会員の信任を受けた執行部の役目なのではないか。

 

 結局この案件は、報告案件として常議員会に上程されただけなので、私がどれだけ反対しようが、あくまでそれは意見ということで、森本会長の意向で実現されてしまう可能性が高い。

 さらに危険だと思うのは、森本会長が、この制度を次年度以降も恒常的に行うことを目指すと実施要領に記載していることである。
 次年度以降も事業戦略費から200万円(最大)が効果も分からない制度に、毎年毎年支出されるというのは、私から見れば納得できない。


 弁護士が全員それなりの余裕のある生活が出来ているのなら、構わないが、そのような状況にはないはずである。

 日弁連や弁護士会の執行部に入られる方々、特に会長職に就かれる方は、弁護士業でも成功しており(森本会長も大阪の超有名大手事務所のトップの方である。)、ご自身ないしご自身の事務所にいる弁護士を基準に、弁護士の状況を考えている可能性が高い。

 前々回(だったかな?)の日弁連会長選挙で、法テラスの弁護士報酬増額を目指すと候補者全てが述べていたが、実際に法テラス案件を自ら処理したことがあるのは及川先生(千葉)、お一人だけで、他3人は法テラス案件を自ら処理した経験がない人たちだった。


 経営がうまくいっている事務所の上層部だった日弁連会長候補者達は、人権保障・社会正義などといいながら、法テラス案件などやっていなかったのである。

 実際に法テラスの弁護士報酬の理不尽な低さを経験していない人たち、市井の弁護士の辛さを何ら理解していない人たちに、その改善に関して真剣に取り組めるとは思えない。

 森本会長、あなたの事務所の弁護士さんだけでなく、もう一度、市井の弁護士の実情をよく見て下さい。

 君子は豹変す、といいます。間違っていたなら正すことが出来るのが君子です。

 一度決めた制度であっても、本当に会費を出すだけの効果が見込めるのかをよく考えて頂き、勇気を持って考え直すべきではないかと、私は考えます。

(この項終わり)

ラトビアで見かけた柴犬(記事とは関係ありません)

森本会長、考え直して頂けませんか?!~その1

 先だって、8月5日の大阪弁護士会常議員会で、生活保護者破産管財事件予納金に関して、法テラスが出してくれない部分を、弁護士会が自腹を切って負担する制度が提案され、私は猛反対したが、採決の結果、賛成多数で可決された(若手の常議員の方は何名か反対して下さった)。

 この件に関して、X(元ツイッター)で呟いたところ、約19万回も表示され、コメントのほとんどが「信じられない」「全国に広まったら迷惑」などであり、賛成するコメントはなかったように思う。

 ちなみに、大阪弁護士会会館のエアコン交換に関連してだと思うが、常議員会資料では令和7年度予算において、会館積立金を17億円以上取り崩す予定になっている。その結果、今年の会館積立金(約4900万円)が入金されても、会館積立預金残高はわずか1950万円しか残らないことが予想されている。
 しかも、常議員会での執行部の報告によると、大林組の施工費見積もりが、大阪弁護士会の当初の見積もり予測よりも、はるかに高額になっているらしい。 
 そのため、17億円支出しても交換必要な状態にある会館エアコンの全てが交換できるかは微妙であり、場合によれば、エアコン交換用の特別会費を会員から徴収しないとエアコンが交換できない危険すら生じかねない状態だと私は考えている。

 このような状況では、どんなに額が低い支出でも、弁護士会費の無駄使いはするべきではない。

 大阪弁護士会館が機能しなくなれば、大阪弁護士会事務局ひいては大阪弁護士会自体も機能しないので、いくら生活保護者の人権保障に必要だといっても、大阪弁護士会の十全たる活動と比較すれば、どちらを優先すべきかは明白である。

 更に言えば、生活保護者の人権に役立つとしても、本来法テラス(国)が負担すべき費用を、法テラス(国)が出さないからといって、どうして弁護士会が自腹を切る形で負担しなければならないのか、全く理解が出来ない。

 確かに、弁護士の生活が国から完全に保障されていて、どんなにボランティアをしようが生活に苦しむおそれがないのであれば別かもしれない。しかし、弁護士は基本的には個人事業主であり、人間である。

 人間である以上、ボランティア活動の前に生活を立てなければならないし、家族も守らなくてはならない。

 しかも、司法改革の際にマスコミや法科大学院推進派の学者は、弁護士も資格に甘えず競争しろといっていたではないか。国民の皆様も特に反対せず、弁護士の激増が決められてしまったではないか。

 市場で競争しろということは、儲けられなければ市場から撤退しろということである。生き残るためには稼げということである。
 そのような社会に放り込まれた状況で、更に日弁連・大阪弁護士会も弁護士の激増に歯止めをかけようともしていない状況下で、いまさら、生活保護者の人権のために自腹を切れと言われても納得が出来るはずがないではないか。

 前回のブログにも書いたが、20年前に比べて、裁判件数は4割減、弁護士数は2.25倍に激増している。弁護士一人あたりの裁判件数は、20年前の約27%しかないのである(裁判所データブックからの計算)。弁護士の所得水準もずいぶん落ちている。
 実際の数値から、なぜ判断できないのか。

 確かに森本会長は、弁護士としては素晴らしい能力をお持ちだと伺っているし、弁護士としては尊敬している。


 しかし、弁護士の支払う弁護士会費で成り立っている弁護士会なのだから、弁護士会や弁護士会会長は、まず会員である弁護士を大事にする施策を考えるべきではないのか。

 一度決まったとしても、勇気を持って考え直すべきだと私は思う。

 

実は、この常議員会で、私は、もう一つの執行部提案にも噛みつくことになる。

(続く)

上高地の星空(山腹の灯りは、登山者のテントの灯り)