先日、日弁連から、「自由と正義」(弁護士会員に毎月配布される雑誌)2月号が届いた。
9頁から36頁まで、27頁にわたり特集記事が掲載されている。
今回の特集記事は、題して、「弁護士のシニアライフプランを考える~日本弁護士国民年金基金のいま~」である。
一読すれば分かるが、弁護士の老後の不安をあおり、日本弁護士国民年金基金(以下「弁護士年金基金」と略する。)への加入勧誘を行っている特集記事である。掛金が上がる可能性がある(実際に今年4月から掛金が上がるようである)ので、早期加入を心からお勧めする次第である、との記載もある。
確かに自営業者である弁護士には、基本的には国民年金しかないし、退職金制度もない。老後に備えて、何らかの準備はどうしても必要である。しかも、ここ10年間で弁護士所得の中央値は25%以上下落している(本記事のp34参照)。
それにも関わらず、日弁連は弁護士人口に関しては、弁護士ニーズはたくさんあるので、司法試験合格者の減員を主張する必要はないと矛盾したことを述べていたようにも思うが、それはさておき、制度的にも弁護士業には老後の不安があることは、多くの普通の弁護士の悩みの種でもあるだろう。
ただ、弁護士年金基金は、不平等な制度でもある。
当初加入した弁護士の予定利率が5.5%
現在加入する弁護士の予定利率は1.5%
なのである。
誤解を恐れず簡単に言えば、掛金が同じでも、当初加入した弁護士は5.5%で計算した利率を加算して年金をもらえるが、現在加入する弁護士は1.5%で計算した利率を加算した年金しかもらえないということだろう。
本来であれば、同じ基金に加入している以上、同じ利率で年金をもらうのが公平なはずである。しかし、当初の高い予定利率を変更できないという説明が、フォントが小さくて読みにくい注釈19に目立たぬよう、記載されている。
そして、当初の予定利率が高すぎることから、低い予定利率の新規加入弁護士が増えないと5.5%もの高率の予定利率を維持することはできない(仮に当初の予定利率5.5%が維持できるのであれば、新規加入弁護士の予定利率が1.5%に引き下げられるはずがない)状況のようである。
同じ大阪弁護士会の山中理司弁護士も、ブログでずいぶん前からこの問題点を詳細に指摘していた。
弁護士年金基金への加入を勧めるということは、私なりに、口悪く言わせてもらえば、
「先輩弁護士の高い年金を維持するために、若手弁護士は安い年金しかもらえない基金にどんどん加入して犠牲になってね」
ということではないのか。
もちろん、特集を組んだ弁護士年金基金の理事者達は、おそらく高率の予定利率で弁護士年金基金に加入している方々であろうが、山中弁護士の指摘を気にしているらしく、国民年金基金も予定利率が不公平になっている点で同じだから致し方ないとの言い訳も記載されている。
しかし、本当に弁護士の老後(シニア・ライフプラン)を心配しているのなら、新規加入者の犠牲もやむを得ないと開き直るのではなく、この不公平を改めるよう努力すること、不公平を改めた上で(若しくは不公平ではない制度で)加入を勧誘することを考えるか、年金基金について制度上公平に出来ないのなら、弁護士年金基金だけを紹介して勧誘するのではなく、他の老後資金の確保方法についても説明することではないのか。
いくら弁護士の老後の心配を配慮するように見えても、新規加入者が不利な弁護士年金基金への加入を勧めるという日弁連の裏には、ご自身(及び先行者達)の高率の年金基金を維持したい、という狙いがあるように思えてならない。
とべ動物園のシロクマ「ピース」
※記事と写真は関係ありません。