「あの~、Sさん、峠とかでドリフトとか、やんちゃな走りされてます?」
「えっ!、私はもう大人ですから、そんな暴走なんてしてませんよ~」
「でも、タイヤのゴムが溶けて、また固まった跡がありますよ」
「あ~、ばれちゃいましたか、それはですね・・・・・」
先日、愛車を点検に出した際の、整備の方とS弁護士との会話である。
確かに整備の方が指摘するように、タイヤのゴムが溶ける走行体験をすることになったのは事実である。
しかしそれは、峠をドリフトなどで暴走したわけではない。
年がいもなく、国内Aライセンスを取ってみようと思い立ったからなのだった。
時はさかのぼるが、S弁護士は、学生時代、かつて京大グライダー部の友人(現在大学教員)に誘われて、中嶋悟が日本人初のフル参戦をした際の日本GPを、鈴鹿サーキットまで見に行ったことがある。その後も、何度か、F1日本GPを鈴鹿サーキットまで見に行ったし、いまだにDAZN(有料チャンネル)でF1中継を見ているくらいなので、スピードに対する憧れはどちらかというと強い方なのだろう。
もともと乗り物が好きで、学生当時超難関であった自動二輪車の限定解除を苦労して果たし(私は京都府の運転免許試験場で受験したが、その際には確か30人以上の受験者中、合格者は私だけだった。)、大型バイクに乗っていた際にも、制限速度を守ろうと思いつつも、若干+αのスピードで走行しがちではあった。
もちろん現在は、20年ほど前に通行区分帯違反の反則行為をしてしまった以降は、無事故無違反の証、ゴールド免許であり続けている。
しかし、当然のことながらバイクも自動車も公道では、その能力を存分に発揮することはできない。そんなことをしたら、周囲にとっては危険極まりないうえに大迷惑である。それに、免許証が何枚あっても足りはしない。
だから、自動車には速く走る能力があるにも関わらずそれを発揮できないことになにか残念な思いを抱きつつ、いつか、自動車の持てる力をフルに発揮して全開で飛ばす走行を、1度でいいからやってみたいという気持ちを、S弁護士は心の奥底でボンヤリと持ち続けてきた。
もちろん、「ええ歳こいて反射神経も衰えてきたおっさんが、何を今さらサーキット走行やねん」という常識論は痛いほど分かる。
しかし、既に同級生の何人かが病気等でこの世を去ってしまい、やれること、やりたいことは、生きているうちにやっておかないとダメなんだ、という気持ちが年々強くなってきている。
今年やらなくて、来年できるとは限らないではないか。
調べてみると、サーキットを走るための講習等を受講してサーキットライセンスを取得すれば、サーキットでのスポーツ走行は可能であることは解ったが、同時にJAFの公認競技に参加するための資格である、ライセンスがあることも解った。
JAFの公認競技に参加する予定は全然ないのだが、どうせやるなら形にも残るしライセンスを取ってしまおうと考えた。
そこで、50歳半ばも過ぎ、「年甲斐もなく」と言われることは間違いないが、国内競技運転者許可証A(国内Aライセンス)を取得する方法を探し始めたのである。
(続く)