司法試験委員が法科大学院に求めるもの~刑事系2

今回は刑事系第2問を取り上げる。

(以下、採点実感からの引用)

4 法科大学院教育に求めるもの
このような結果を踏まえると,今後の法科大学院教育においては,従前の採点実感においても指摘されてきたとおり,刑事手続を構成する各制度の趣旨・目的を基本から深くかつ正確に理解すること,重要かつ基本的な判例法理を,その射程距離を含めて正確に理解すること,これらの制度や判例法理を具体的事例に当てはめ適用できる能力を身に付けること,論理的で筋道立った分かりやすい文章を記述する能力を培うことが強く要請される。特に,法適用に関しては,生の事例に含まれた個々の事情あるいはその複合が法規範の適用においてどのような意味を持つのかを意識的に分析・検討し,それに従って事実関係を整理できる能力の涵養が求められる。また,実務教育との有機的連携の下,通常の捜査・公判の過程を俯瞰し,刑事手続上の基本原則や制度がその過程の中のどのような局面で働くのか,各局面ごとに各当事者は何を行わなければならないのか,それがどのように積み重なって手続が進むのか等,刑事手続を動態として理解しておくことの重要性を強調しておきたい。

(引用ここまで)

【超訳】~司法試験委員の言いたいことを推測しての意訳

4 法科大学院教育はこうやってもらわんと

 採点結果から見たら、今後の法科大学院教育は相当頑張ってもらわなあかん。前からなんべんも言うてきたけど、刑事手続を形づくっとるそれぞれの制度がどんなもんで、どういう目的で存在しとるのかということを、基本からしっかり正確に理解させなあかん。刑事手続き自体の理解があかんのやったら、そもそも判例やら論点やらを教えても理解できるはずがないやろ。先ずこれができてへんから言うてんねん。

 それができた上での話しやけど、重要で基本的な判例があるわな、その判例がどういう理屈でどういう結論を導き出しとるのか、その理屈の背景には何があるのかっちゅうこと、その判例がどんな事案まで適用できるんかっちゅうことを正確に理解させなあかんのや。その二つができたとして、制度や判例の考えを具体的な事案に、上手いこと使えるようにする能力をつけてやらんとイカン。それから論理的で筋道だった分かりやすい文章で表現する力も要るわな。理屈で勝負する法律家が、論理的でなかったらあかんやろ。ほんでホンマに理解しとるんやったら分かりやすく説明できるわな。大量の書面を読まされる裁判官を説得するには、即読即解の文章で表現できる能力が不可欠やねんで。

 なんも特別なこと言うとるのとちがうで。まあ言うたら、刑訴法の基礎・基本の勉強、実務家として当然やらなあかんことなんや。敢えて言うけど、このことは、強く要請しとるんやで。強く要請しとるっちゅうことは、全然できてへんからやで。

 特に法律の適用場面については、生のいろんな事実やら事情やらがあるわな、その事実や事情その絡みが、法規範を適用するっちゅうときにどんな意味を持ちうるのか、意識しながら分析・検討して、その観点から要するに事実はこうやってんな、と一通り整理できる能力を養ってもらわんとあかん。問題文の事情を抜き書きして、これらの事情からこうや、と結論に飛ぶのもあかん。例えばの話しで全てにあてはまるとは言わんけど、問題文から事情を引っ張るなら、「事情」→「条文の●●に該当」なんて直ちに書いたらあかんで。「事情」→「その事情が法的にどんな意味をもってんのかの評価」→「(評価を前提にして)法律の条文の●●に該当」とかにせなあかんし、もちろん条文の●●に争いがあるなら、そこんとこも決着つけとかなあかん。自分の主張に弱いとこがあるならそこも手当てしておく必要も当然あるやろ。
 都合のええとこだけ、引っ張り抜いてきて、こんな事情があります、ハイ結論、ではアカンねん。

 それから実務教育と、関連づけて教育してもらわなあかん。典型的な捜査や公判の流れをつかんで、刑事手続き上の基本原則やら制度やらがどないな意味を持ってどう動いとんのか、各場面で当事者はそれぞれ何を考え、何をせなあかんのか、それらがどうやって重なりおうて刑事手続きが進んでいきよるのか、全体的な流れとして刑事手続きを勉強しとかなあかん。このことを強調するのは、答案を見とると、受験生は、刑事手続きの全体的な流れがわかっとらんからやで。論点についてはそれらしいことを書いとるけど、刑事手続きの全体像を理解しとるとは思われへんのや。ずばり言うたら、論点主義になっとんねん。

 かつて大学側は予備校に対して「論点主義」やと批判したわな。法科大学院で教育したら論点主義やなくなるはずやってんな?せやけど実態は、全体の流れが分からんまま個々の論点を書いとるような答案ばっかしやで。

よう気いつけて、教育せなアカンやんか。

(続く)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です