大阪弁護士会の常議員会で、現在月額5000円を徴収している会館特別会費の減額について議論がなされた。
私もよく知らなかったのだが、現在は原則として、5000円×12ヶ月×18年を支払えば一応会館特別会費の徴収は終了ということになっているらしい。
これを月額3000円に減額できないのかという話だ。昨今良く言われる若手を中心とする弁護士の経済的苦境等に鑑みれば、馬鹿高い弁護士会費(大阪では、月額約5万円弱+隠れ会費~管財事件負担金・国選事件負担金・法律相談負担金など)の会費減額は急務であろうし、若手支援にもつながるということで、一つの提案として十分考慮に値する提案だと考えられた。
弁護士会側のシミュレーションによると2036年には、積立額で約20億円の差が出るとのこと。つまり仮に会館特別会費を減額し、2036年に会館を建て替えるなら、月々の支払いは楽にはなるが2036年に立て替える際の大阪弁護士会会員の負担が約20億円増えるという計算になるともいえる。
確かに、若手への支援策にもなるという執行部の理由は分かる。しかし、今でも苦境の若手が多いといわれているのに、弁護士需要が急に増加するとも考えられない状況下では、将来の弁護士がさらに苦境に立っている可能性の方が高いようにも思う。結局どちらが良いのかは容易には判断できない。私は、決議において保留せざるを得なかった。
結果的には、この議案は、賛成多数で、総会に提出されることになった。
議論の過程で、「公平の観点から、減額後に入会した新会員が結果的に3000円×12ヶ月×18年で足りるのなら、現在5000円支払っている会員に不公平であるため、総額で3000円×12ヶ月×18年に達したら以降の支払いは免除すべきじゃないのか」、との意見もだされた。
確かに会館特別会費徴収が開始された2007年から7年以上経過しているので、差額の2000円×12ヶ月×7年=168000円をどうしてくれるんだ、という批判は当然ありうると思う。
この意見を聞いて改めて思ったのは、若手会員の会費減免措置は一見当然のように見えるが、実は一般会員からすれば極めて不公平な制度だということである。通勤に使う電鉄会社だって、新入社員は給料が少ないから運賃を割引きしましょうとは言わないだろう。運賃に見合ったサービスを提供しているからだ。弁護士会だって本当はこの電鉄会社と同じなのだ。
この不公平を改めるためには、公平に弁護士会費を負担させることが最も単純な解決策だが、それも若手会員にとって厳しいとなれば、残る手段は、弁護士会費を全員一律に大幅に減額することしかないように思う。そのためには弁護士会が本当に必要なこと以外には手を出さないことが、今後は求められるのではないか。
いままで、弁護士会は、人権擁護に必要なことだから、良いことだから、等の理由でどんどん支出を増やしてきたように思う。それを支えたのが、弁護士の正義感と馬鹿高い弁護士会費だった。
弁護士が少ない時代であれば、それでも弁護士は仕事にあぶれることもなく会費を支払えた。しかし、司法改革による弁護士激増策の結果、現状は大きく変わってきている。就職出来ない新人弁護士の増加もそうだ。弁護士とはいえ同じ人間だ。人間は生活しなければならない。だから、背に腹は代えられない。理想は現実にはかなわない。ベテランの先生から、新入会員の希望する委員会は、人権擁護の分野よりも仕事につながる可能性が高い委員会が圧倒的だ、との嘆きを聞いたこともある。
結局、弁護士激増策は、弁護士の経済面を大きく損なわせただけでなく、弁護士の正義感も失わせることにつながり、次第に顕在化しつつあるのではないかと、私は危惧している。