法曹養成制度改革顧問会議第2回議事録~その2

法曹養成制度改革顧問会議第2回議事録には、興味深いデータが出ている。

残念ながらそのデータの公開はされていないのだが、最高裁、法務省刑事局、日弁連から、現在の司法修習に関するアンケート結果が出ており、それぞれが内容を報告しているのだ。

まず、裁判修習を担当する最高裁からは次のような報告が出ている。

・各庁に対して、分野別実務修習の開始時において、修習生に修習を円滑に行う上で支障となるほど不足している知識・能力はあるか、あるとすれば、それはどのようなものかということを尋ねております。これによりますと、そこまでの不足はないと指摘をしているところが多いわけではございますけれども、しかし、項目によっては、一部の修習生にそうした不足があるといった回答が多いものも見受けられるところ

・裁判教官からは、4回に分けて行われる分野別実務修習のうち、第1クール、あるいは第2クールで教官が行う導入起案の段階では、クラス70人のうち3~4名程度は基本的知識におぼつかない者がいるといった実感も聞かれました

(坂野のコメント)

→単なる知識・能力不足ではありません。司法修習を円滑に行うことができないほどの重度の知識不足、能力不足の問題です。司法修習は最高裁の管轄ですから、修習がうまく機能していないと自ら言い出すことは、極めて困難な立場に最高裁はあるはずですが、それでも問題点を認めざるを得ない面があるということでしょう。

・修習終了時点において、修習生に対して、その時点において必要な知識・能力を修得させられたかという質問がございます。これは、3ページ目と7ページ目の一番下の黒ポツでございます。ここでは、

大体7割ないし8割程度の庁が、この能力を修得させられたという形で回答しております。

(坂野のコメント)

→肯定面からいえば、7~8割の裁判所が、司法修習生に必要な能力を身に付けることが出来たということですが、裏を返せば、2~3割の裁判所は司法修習生に必要な能力を身に付けさせることができずに裁判修習を終了させている場合があることになります。

・刑事裁判でございますけれども、ここのグラフを御覧になっていただければと思います。刑事裁判修習においては、起案件数の少ない者がいることも否定できないところでございます。

・分野別実務修習の実を上げるためには、修習生が実務修習に円滑に入ることができるように指導する必要があり、従前から修習開始前後に導入的教育、例えば、事前課題を検討させたり、開始後の導入起案と公表、あるいはDVDでの教材の視聴などによって、法科大学院で学んだ教育と司法修習における実地の修習との架橋を図っていたところではあるわけでございます。

(坂野のコメント)

→実務と理論の架橋は、法科大学院で行われているものと思っていましたが、ここでは、法科大学院教育と司法修習を架橋しなければならない実態が明らかになっているようです。法科大学院と連携すると言ったって、法科大学院が5~6校ならいざ知らず、乱立しすぎで教育レベルもバラバラな法科大学院と、連携することは事実上不可能でしょう。

・裁判実務修習開始時に実務修習を円滑に行う上で著しく不足している知識・能力の有無や程度を尋ねた質問において、民事裁判でいえば、民事実体法の知識、要件事実の考え方、事実認定の基礎的知識・理解、あるいは刑事裁判では、刑事訴訟手続の基本的知識、事実認定の基礎的知識・理解などのように、一部の修習生に不足があるといった回答が比較的多かった項目も見られるところでございます。

(坂野のコメント)

→「民事裁判でいえば、民事実体法の知識、要件事実の考え方、事実認定の基礎的知識・理解、あるいは刑事裁判では、刑事訴訟手続の基本的知識、事実認定の基礎的知識・理解など」とありますが、要するに民事裁判、刑事裁判に関する全ての面における基礎的な知識・能力に問題が生じつつあるということのようです。

(続く)

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