法曹養成制度改革顧問会議第一回議事録から~2

有田顧問

・若い法曹の人たちを見てみますと、非常に素直でいいのですけれども、また、迅速に資料集めだとか判例集めは十分できるのですけれども、では、あなたはどういうことでこの案件を処理したいと思うのかと聞きますと、なかなか自分の頭で考えて決断するということが欠けているような面が多々あるように感じております。

(坂野のコメント)

弁護士を社会生活上の医師として位置づけ、質・量ともに豊かな法曹を生み出そうとしてさんざん制度をいじった結果、有田顧問によれば、自分の頭で考えて決断することが欠ける面が多々見られる法曹が増えてきた、という実感を述べられています。

有田顧問は検察官として、つい最近まで36年間現場で働いてこられた上での実感だそうです。司法研修所教官などの法曹養成制度に関与されたことはないそうで、それだけに、現場のストレートな感想を述べておられることと思われます。

資料や判例は集めることはできる、でも自分で考えて決断できない、もし有田顧問の実感通りであるならば、今の法曹養成制度は相当大きな過ちを犯している可能性があるのではないでしょうか。

・私自身は、現場で仕事をしてきたこともございまして、机の上の議論ではない、生身の人間を相手にするのが法律家の仕事である。実は、人間、悩みを持ったりいろんな問題がある人を丸ごと包み込んで話を聞き出し、その解決策を考えていくというのが法曹の在り方だろうと思っております。そういう意味で、そういった法曹を排出するためのシステムはどうあるべきなのかということでも議論に加わっていきたいと思っております。

(坂野のコメント)

有田顧問の実感からすると、机上の議論を重視し、生身の人間を相手にするものだという自覚が欠けている法曹が排出されているということになりそうです。そもそも司法制度改革審議会意見書には次のようにあったはずです。

(司法審意見書より引用)

高度の専門的な法的知識を有することはもとより、幅広い教養と豊かな人間性を基礎に十分な職業倫理を身に付け、社会の様々な分野において厚い層をなして活躍する法曹を獲得する。

(中略)

法曹養成制度については、21世紀の司法を担うにふさわしい質の法曹を確保するため、司法試験という「点」による選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を整備することとし、その中核として、法曹養成に特化した大学院(以下、「法科大学院」と言う。)を設ける。

(引用ここまで)

お金と時間をたんまりと受験生・志願者にかけさせて、プロセスによる教育を行ってきたのですから、もしそのプロセスによる教育とやらが素晴らしく且つ効果を上げているのであれば、当然、近頃の若い法曹にも高度な専門的法的知識、幅広い強要、豊かな人間性と十分な職業倫理が身についているはずでしょうから、このような有田顧問のお話は、でてこないように思うのです。

一体プロセスによる教育とはなんであり、どのような効果が上がっているのか、きちんと検証する必要は当然あるように思われます。

・今、話をいろいろお聞きしてみますと、阿部顧問のおっしゃった点に賛同する部分は多々でございます。ただ、一つ付け加えるとするならば、この問題の大きなもの、あるいは要になるであろうと思うのは、やはり法曹人口のあるべき姿ではないかという点を付け加えたいところでございます。

(坂野のコメント)

需要を顧みない法曹人口激増政策に問題があるとのご指摘だと思われます。マスコミや一部の学者さんが、自由競争させればいい、と何とかの一つ覚えのように繰り返していますが、前から申しあげているとおり、法曹の分野に関しては自由競争が成立しにくい状況があるのです。その理由は、簡単にいえば、ユーザーが弁護士の能力について判断することが困難であるということです。弁護士が提出した準備書面の善し悪しを一見して理解できる方はそうおられません。司法試験に合格した司法修習生でも怪しいところです。ですからユーザーが提供されるサービスの善し悪しを判断できて、良いサービスを選択可能である、という自由競争の前提が崩れているのです。さらにいえば、全く同じ状況で同じ事件を別の弁護士に依頼することもできませんから、比較検討も困難なのです。

そうなれば、一般国民の方の判断基準は、良い仕事をするかどうかではなく、大手であるとか、人当たりが良かったとか、値段が安そうだとか、法的サービスの質と違う点になる可能性が高いはずです。

自由競争論者は、法的サービスに関して、自由な競争が成り立つ条件がそろっているか再度確認してから述べるべきでしょう。

(続く)

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