裁判官から見た法曹人口の拡大と法曹養成制度改革~その4

否定的意見ばかり載せることは、公平を欠くと思われますので、肯定的意見、中間的意見も引用致します。

(肯定的意見その1)

弁護士増加によりゼロ・ワンが解消され、地方にも弁護士が増え、ひまわり基金事務所などが各地に設置され、被疑者国選弁護の拡大が可能になり、弁護士の職域も一定程度拡大する成果があった。

(坂野のコメント)

元裁判官、現簡裁裁判官の方の御意見です。ひまわり基金法律事務所(公設事務所)は、弁護士過疎解消のために、日弁連・弁護士会・弁護士会連合会の支援を受けて開設・運営される法律事務所です。法曹人口増だけでひまわり基金事務所が出来たわけではなく、その裏側には弁護士個人の金銭負担があるのです。弁護士職域の一定程度の拡大と仰いますが、それはここ15年で約2倍の弁護士人口増加に見合ったものなのでしょうか。今やコンビニ上位3社(セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートampm)の全国店舗数の合計よりも弁護士の数は、はるかに多くなっています。

(肯定的意見その2)

法科大学院制度を含めた法曹養成制度の改革は、弁護士の就職難等がいわれるが、基本的に正しい方向である。修習生の実力不足がいわれているが、修習期間が短縮されたのであるから当然のことであり、弁護士になってからの教育で補うことが制度的に考えられていたはずだ。

(坂野のコメント)

現役裁判官の御意見です。少なくとも私が見た限り司法制度改革審議会の意見書には、裁判官・検察官・弁護士全ての法曹に関する継続教育を整備すべきであるとの項目はありますが、弁護士になってからの教育で司法修習を補うとの項目は見当たりません。なにより、法科大学院は優秀な法曹を排出すると豪語したのですから、いまさら、レベルが落ちても仕方がないとの御意見はいただけません。

(肯定的意見その3)

3000人目標に届いていないとはいえ司法試験合格者は大幅に増え、その90%は弁護士になる。この際、修習を弁護修習一本に絞り、裁判官・検事は任官後に、別に研修させるのがよい。これは、分離修習ではなく、法曹一元に連なるものだ。

(坂野のコメント)

元裁判官の御意見です。結局裁判官と検察官は別個に任官後研修を受けさせるということですから、実質的な分離修習につながるようにも思いますが、その当たりはどうお考えなのかよく分かりません。またどうして法曹一元につながるのか、法曹一元が何故良いのか、この御意見だけからはよく分かりません。なにより、この御意見が肯定的意見と分類されるべきなのかが分かりません。

(続く)

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