大阪弁護士会は、法科大学院維持の意見書

日弁連が各単位会に意見照会をかけていた、「法科大学院制度の改善に関する具体的提言案」について、本日、大阪弁護士会常議員会で審議がなされました。

私は従前から、法科大学院制度に疑問を持っていたため、事前に大阪弁護士会執行部に対して、法科大学院導入により生じたメリット(弊害を上回るメリット)について説明して欲しいとお願いしていました。

執行部の回答は、
①事実に即して思考する、少人数双方向の教育を設計し、実践できている。
②多様なバックグラウンドを持ち、コミュニケーション能力に優れた法曹が生まれている。
③多くの法曹実務家が、法曹養成課程に関与できるようになった。
④旧制度に比べて人生設計を立てることが容易になった。

という4点でした。

それに加えて、法科大学院擁護派の先生からは、⑤良い制度なんだが上手く機能していないだけ。⑥法科大学院出身者でも優秀な人がいる。⑦ある制度を作ったときにその制度をまず改善する方法を考えるのが筋。というご発言がありました。

私としては、そもそも法科大学院は、司法試験合格者を増加させる際に、質の低下を防ぎ、時代の要請に合致したより優秀な法曹を生み出すものとして(少なくとも建前上は)設計されたものであると考えています。そうである以上、優秀な法曹を多数輩出していなければ法科大学院に存在意義は無いと思っています。

ところが、法科大学院擁護派の方の説明①~⑦は、どれだけ優秀な法曹を輩出したというものではありませんでした。

①についていえば、いくら良い教育を、と考えて設計・実践しても、それが身につかなければ意味がありません。ゆとり教育の失敗が良い例です。旧制度でも司法研修所で少人数双方向教育はできていました。
②については、新60期は確かにそうだったかもしれませんが、その後は法学部以外出身者の割合は減少を続け、現在では、旧司法試験時代と割合的に変わらなくなっています。むしろ、法科大学院制度は、法科大学院に通えない地方の有職者、お金の問題で法科大学院に通えない方を排除する制度となっています。コミュニケーション能力については、年代とともに変わるものですし、旧制度出身の弁護士がコミュニケーション能力で劣っているという実証もありません。
③について、多くの法曹が、法曹養成に関与したところで、優秀な法曹を輩出できなければ自己満足の世界でしょう。
④について、人生設計が立てやすいかどうかは、優秀な法曹の輩出とは関係ありません。
⑤について、どんなに良い制度でも機能しないなら無駄です。7年かかって良くならないものが、本当に良くなる保証があるのでしょうか。
⑥これは議論のすり替えです。法科大学院制度を否定的に述べる人も、法科大学院出身の方で優秀な方がいらっしゃることは否定していません。合格者の全体的なレベルダウンは、司法試験採点雑感に述べられたとおりです。司法試験合格者の全体的なレベルダウンが生じているのであれば、法科大学院に問題があることは明らかでしょう。
⑦ある制度を作ったときに、その改善を目指す方法もあるでしょうが、それは改善して良くなることが明らかな場合でしょう。もし、改善しても駄目であることが明らかなら、制度自体を変えるしかないように思います。逆にそこまで法科大学院側に自信があるなら、それこそ司法試験の受験資格を法科大学院卒業者以外にも与えて競争すればいいのです。本当に素晴らしくてかつ役立つ教育をしているのであれば、司法試験で予備校ごときに負けるはずもないでしょう。また社会に出ても即戦力として引く手あまたのはずです。

このように、結局法科大学院制度の良さは、全く私には理解できる説明は頂けませんでした。しかし、大阪弁護士会としては、法科大学院を維持改善する意見に賛成する常議員会決議をしてしまいました。

賛成29、反対13、保留9でした。

法科大学院維持派の先生方、本当に法科大学院制度は良くなるのですね?
もし、失敗したときは、逃げずに責任取って下さいね。

※ブログの記載は、記載者の個人的意見であり、当事務所の見解ではありません。

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