司法試験予備試験については、故意に予備試験の点数を下げているのではないかという疑惑を私は持っており、そのことについて、昨年ブログに示唆したことがある(2011.10.26)。
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/10/26.html
しかし、その後、司法試験予備試験は本当に、故意に点数を低く採点していることは間違いないと、確信する出来事があったので、ご報告したい。
実は、私の大学時代の友人が、予備試験を受けていたのだ。彼は、旧司法試験にも26歳で合格し弁護士になって以後15年以上の実務経験を有する。
その人が、予備試験を受験して合格したのだが、その論文式試験の順位は50位前後だったそうだ。
もちろん、その人は仕事が忙しくて、受験勉強などほとんど出来ていないだろうから、予備試験に向けて受験勉強をした人達の特に優秀な方々に上位を抑えられることは十分あり得ることで、この順位は不思議ではないかもしれない。
しかし問題は、予備試験でのその人の得点の評価であり、また、その人がそれなりの実務経験を有する日本の弁護士であるだけではなく、アメリカの弁護士資格も複数の州で取得し、かつ、法科大学院の教員でもあることだ。
いわば、その人は、私の目から見ても、法科大学院制度が目指した①豊かな人間性と感受性②幅広い教養と専門的な法的知識③柔軟な思考力④説得・交渉の能力⑤社会や人間に対する洞察力⑥人権感覚⑦先端的法分野や外国法の知見⑧国際的視野と語学力⑨職業倫理といった能力において特に劣っているとはいえないのである。
ところで、予備試験の合格者の点数を見てみると、500点満点で、全国最高点が302点である。仮にその人の予備試験論文式試験での成績が、50位だったと仮定すると、得点は265点あたりということになる。
法務省が発表した予備試験の論文式試験での採点に関する文書によると、
優秀: 50~38点(5%)、
良好: 37~29点(25%)
一応の水準: 28~21点(40%)
不良: 20~0点(30%)
500点満点で265点の得点は、53%の得点率であり、「一応の水準」の最上位ランクではあるが、良好にすら届かない。
念のため触れておくが、予備試験は、新司法試験を受けても良いだけの基礎的素養があるか、つまり法科大学院卒業生レベルの素養が身についているか、を確認することを目的とする資格試験である(司法試験法第5条1項)。
それにも関わらず、上記のように、それなりの実務経験を有する実務家教員であっても、その答案が予備試験において、トータルで一応の水準としか評価されていないのである。換言すれば、いかに、法務省が予備試験ルートを故意に狭め、合格者を絞っているかが、よく分かると思う。
法科大学院制度を維持するためとはいえ、こんなインチキ臭い試験をやっていたら、法曹志願者が激減するのも無理はない。
法曹養成制度の改革は、優秀な法曹を生み出すこともその目的にあったはずだ。法科大学院制度の設立・維持が目的ではない。私たちは、どこかで、法科大学院側の主張が実は自らの利権維持にすり変わっていないかチェックしていく必要があるように思う。
※この話は、本当のお話である。