(続き)
これは、私のうがった見方でかもしれないが、その攻防は、会長選挙の再投票に大きく影響するからかもしれなかった。
つまり、ここで、提言案に1000人という数字が入ると、宇都宮会長はまず1500名+さらなる削減という公約を、ギリギリ果たしたことになりそうだし、その実績を再投票時に明示できる。山岸候補とすれば、1500名公約を振りかざした意味が無くなるばかりか、1500名より、さらに削減に向けた働きを先に、宇都宮会長にやられてしまったことになる。
なにより、山岸候補としては自分を推薦してくれる東弁の主流派の意向が1500人以下では困るというものだから、日弁連会長選挙に勝つためだけに1000人という独断的な発言をすることも困難だ。つまり、山岸派からすれば、なんとしても1000人という数字をこの提言案に入れられては困る状況にあったはずだ。
とにかく、約2年にわたる、法曹人口政策会議は、最後の最後まで、議論がなされ、まだまだ発言を求める人達も多くいた。
私の記憶では、会議が紛糾したため、休憩の後に、提言の趣旨に、1000人決議をしている単位会が相当数あるという事実だけでも入れるべきではないかという折衷的提案も理事者から出され、1000人説の人達も不満を抱えながらも納得しかけたが、今度は1500人に固執する人達が猛烈に反対をはじめ、議長代行が議論を打ち切り、採決に持ち込まれた。
採決の場では、今後のためにも賛否を投じた人が誰だか明確にするべきとの意見もあったが、理事者側は(私の記憶では)会議の規程か何かを説明して採用しなかった。また、これだけ多くの単位会が1000人を支持しているのだから、せめて提言の趣旨に、1000人決議をしている単位会が相当数あるという事実だけでも入れるべきではないかという修正動議も出された。
しかし、修正動議は賛成39,反対59、棄権16で否決。
そして、会議は、次の通り、最終とりまとめに関する採決を行い、最終とりまとめ案をまとめた。
賛成76、反対28、棄権5
結果的に、1000人という数字を趣旨に入れ込むことはできなかった。私は、日弁連の内部の政治的情勢に疎いので、どなたが山岸候補派なのか明確には知らないが、ある先生のお話によると、会議後、(1000名の数字が入らなかったことについて)山岸候補派の先生方は笑みを浮かべていたとのことであり、もしそれが事実であるのなら、してやったりの気分だったのかもしれない。
私から見れば、いっちゃぁ悪いが日弁連会長の椅子を巡る争いで、弁護士全体に関わるかもしれない事項を左右してほしくはないのだが、どうも横から見ている限りではそんな感じがして仕方がなかった。
提言案の評価は、弁護士全ての皆さんに委ねるしかないが、日弁連の舵を動かすのがどれだけ重く、また日弁連の方向を変えることがどれだけ難しいかを痛感した2年間だった。
この2年間、私なりに出来ることはした、という気持ちもあるが、結果的には焼け石に水のような提言案しか出せなかったことについては、残念な思いでいっぱいだ。
2年間という短い時間では、なかなか日弁連の方向を変えることは難しい。