平成22年以降の合格者数のあり方について
公認会計士試験については、公認会計士・監査審査会において運用されているところであるが、平成22年以降、当面の合格者数については、金融庁としては、合格者等の活動領域の拡大が進んでいない状況に鑑み、懇談会のとりまとめを踏まえた所要の対応策が実施されるまでの間、2千人程度を目安として運用されることが望ましいものと考える。(第1回公認会計士制度に関する懇談会資料)
平成23年以降の合格者数のあり方について
公認会計士試験については、公認会計士・監査審査会において運用されているところであるが、合格者等の活動領域の拡大が依然として進んでいないことに加え、監査法人による採用が低迷していることに鑑み、平成23年以降、当面の合格者数については、金融庁としては、1千5百人程度から2千人程度を目安として運用されることが望ましいものと考える。(第10回公認会計士制度に関する懇談会資料)
現在の公認会計士制度は、監査業界のみならず経済社会の幅広い分野で、公認会計士あるいは会計専門家が活躍することが期待されるという考え方に基づき、平成15年に公認会計士法が改正をされて、社会人を含めた多様な人材でも受けやすいような試験制度になったということで、平成18年より新しい制度が実施されている。
公認会計士試験合格者は、平成7~13年までは約670~960名程度、平成14年~17年までは、約1150~1370名程度だった。
新制度導入後は、
平成18年 3108名
平成19年 4041名
平成20年 3625名
平成21年 2229名
と合格者を激増させてきた(以前の当職のブログと数値が違うのは、旧第2次試験合格者等の短答式試験見なし合格者を除外するなどの点で、ずれが生じている)。
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/04/14.html
しかしながら、現状においては、公認会計士試験合格者等の経済界等への就職は進んでおらず、また、想定していた社会人の受験者、合格者についても十分増加していないなど、現行の制度のねらいは道半ばの状況にあるし、結果的に試験制度の魅力が低下する(つまりは優秀な人材が集まらない)という可能性もあるということで、わずか3年で合格者減少へと舵を切った。その現れが冒頭に上げた、「合格者数の在り方」なのだ。
公認会計士に対する社会のニーズに合わせ、質を維持しながら合格者数を決定しようとする動きであり、至極当たり前の行動である。当初のニーズ予測が大きく外れたことによる修正であり、現実を見据えたものともいえる。
一方、司法試験はどうか。法科大学院制度を擁護することに執着する学者が、具体的にはどんなニーズかと質問しても答えられないくせに(当職のブログ「奥島孝康氏への質問状」「王様は裸だ」参照)、ニーズがある、ある、と強弁し、現実すら見ようとしていない。
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/06/07.html
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/06/27.html
しかもそのような学者を制度を検討するフォーラムに組み込むから、間違った道に進んでいても軌道修正ができない。一度決まったことであっても間違っていたのなら直ちに過ちを認め修正するのが知恵のある人間というべきだ。
この点、公認会計士試験に関する金融庁の対応は、少なくとも司法試験に関する関係諸機関の対応に比べて優れていると言えよう。マスコミも特に批判していない。正しい対応だから当然だ。
しかし、ことが司法試験に関することになると、合格者等の経済界等への就職は進んでおらず、また、想定していた社会人の受験者、合格者についても十分増加していないし、結果的に試験制度の魅力が低下するという可能性もあるにもかかわらず、マスコミは、とにかく一度決めたことを守れと、叫び続ける。
マスコミの誤導に惑わされずに、法曹に優秀な人材は必要なのか不要なのか、仮に優秀な人材が必要であるとするなら、そのために必要な施策はなんなのか、立ち止まって考える必要があるように思うのだ。
※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。