日弁連新聞8月号のコラム「ひまわり」に、法科大学院志願者、さらには法学部志願者の減少が書かれていた。
コラム氏は、経済的・時間的にも法律家になるために負担があることが一因としながら、法律家・弁護士に夢を持つ人が減っているということではないかと指摘している。
実際に、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)を志願する人は、大きく減少している。法科大学院を受験するために必要な適性試験の受験者数は、試験が2回行われ、重複受験するものが多いので、数字上は13000人ほどの志願者となるが、日弁連法務研究財団の発表によると、実際の人数で7211名しかいない。
ちなみに、昨年度の弁護士一括登録時に登録できなかった(就職先が見つからないし、いきなり独立も出来なかったと考えられる)司法修習生は200名以上。
就職難はさらに激化しており、アンケートから推測すると、今年の一括登録時には500名程度の未登録者数がでるのではないかと危惧する方もいる。
この現状なら志願者が、激減して当然だ。むしろ激減しない方がおかしい。
今の制度では、多額の学費と長期間の拘束を余儀なくされながら、きちんと教育の成果を上げられない法科大学院を嫌でも卒業しなくてはならないし、仮に卒業できても新司法試験に3回以内に合格する必要がある。新司法試験に合格できても、給費制が廃止されれば、自費で1年間の修習生活を送る必要がある。必死に頑張って司法修習を自費(若しくは借金)で終えたとしても、2回試験で約7%は落とされるし、2回試験に合格しても2000人中裁判官・検察官になる200人を除いた1800人中、500人以上の就職先がないかもしれないのだ。
誰が好き好んで、高い学費・費用と長い時間を費やして、こんな危険な道を歩こうというのだ。
ちょっと現実を見ることができなくなっている、法科大学院制度擁護の大学教授は、新司法試験の合格率が高くなれば志願者は増えると言い張るが、違うだろう。旧司法試験の合格率は、新司法試験の10分の1以下だったが志願者は毎年増加傾向にあった。
そもそも法科大学院教育を受けてきた、新司法試験の受験者の(全体としての)実力低下は、このブログでも何度か紹介したが、目を覆わんばかりの惨状であって、これ以上無理して合格者を増やせば国民の皆様に迷惑がかかるだろう。
自分たちが、きちんと教育できないことを棚に上げて、新司法試験のせいにするなんて、教育者が聞いてあきれる。法科大学院擁護の大学教授がいうように、法科大学院できちんと教育しているのであれば、また、社会のニーズがあるのなら、新司法試験に合格しなくても法科大学院卒業生は、社会で引っ張りだこのはずだ。
新司法試験の合格率を批判する前に、どれだけの求人が、法科大学院卒業者で新司法試験に合格できなかった方に殺到しているのか、法科大学院側は、明らかにする必要があるのではないか。それもできずに、立派な教育をしていると言い張っても、なんの説得力もない。
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