「陽だまりの樹」 手塚治虫 ~但し少し脱線あり

(出版社~小学館のコメント)

 動乱の江戸末期、来たるべき近代国家への苦悩と希望を描いた巨編!!時代の流れに翻弄されつつも、自らの使命を全うした武士・伊武谷万次郎と医師・手塚良庵。二人の男の生き様を軸に、近代国家幕開けまでを作者自らのルーツを折り混ぜながら描いた幕末感動ロマン!!

 手塚治虫の漫画の中で、この作品をベスト作品に推す人も相当いらっしゃるのではないでしょうか。

 私は、この作品を受験時代に一緒に勉強していたH君から教わり、合格後に読みました。(H君は司法試験はあきらめたものの、一流企業で立派に頑張っています。)

 ノンポリで遊び人の手塚良庵、極めて生真面目で不器用な伊武谷万次郎。対照的だがなぜかウマが合う2人が、激動の時代を精一杯生きていくというお話ですが、具体的な内容を、私などがご紹介するよりは、とにかく、ご一読頂くのが一番だと思います。

 「陽だまりの樹」とは、この作品中で藤田東湖が当時の江戸幕府を例えて語った台詞の中に出てきます。

 東湖は、江戸幕府は見かけは立派だが、その内部は慣習に囚われた門閥で占められて倒れかけているとし、その例えとして陽だまりの樹を指さします。この状況を打破するのは、若い力の行動力しかないと東湖は万次郎に語ります。

 今の日本も、そして日弁連も、私には全く同じ「陽だまりの樹」のように見えます。

 しかし、少なくとも日弁連に関しては、若い力を結集することは、ほとんど出来ていないように思います。

 せっかく、これではいけない、変えなければならないと、問題点に気付いても、きっとそうひどいことにはなるまい、誰かが変えてくれるに違いないと、誰か他人が変えてくれるのを期待しているだけでは、結局何も変わりません。

 若手が生活に追われ疲弊している状況下では無理もありませんが、どうしてそうなっているのか、これから将来の司法を担う若手弁護士がそれで良いのか、現在の惨状を招いた当時の指導者的立場の方は、十分考える必要があるはずです。

前回の日弁連の法曹人口政策会議では、千葉県の弁護士及川先生が、人口問題と密接に関わる法曹養成制度について、旧態然とした主張・提言を繰り返そうとする日弁連執行部に鋭く迫り、問題の改善を提案されていたのが印象的でした。及川先生は、会議後も宇都宮会長・海渡事務総長らに、必要と思われる施策の提言を直接お願いしており、宇都宮会長もきちんと向き合って聞いて下さいました。

 今問われているのは、執行部など理事者にとっては、理想を実現できず失敗してしまった点について見栄や自己保身を捨てて現実を素直に見る目と、若手の提言を生かそうとする度量があるかどうかであり、若手にとっては、握りつぶされてもあきらめずに行動することなのではないかと感じました。

 「陽だまりの樹」から脱線してしまいましたが、素晴らしい作品であることに違いありません。大部ですが、さすが手塚作品、飽きることなく一気にストーリーが展開します。続きが読みたくてたまらなくなるはずです。

 読もうかどうしようか、迷っておられる方は、すぐにでも読まれることをお勧めします。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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