実は、先日、GW中にでもTPPについて少し勉強しようと思って書店に行ったが、TPP反対論者と思われる表題の書籍はいくつも見られたが、TPP推進論と思われる書籍は見当たらなかった。
その後、GW中に発刊されているのかもしれないので、また見ておこうと思う。
まず読んでみたのが「TPPが日本を壊す」(廣宮孝信 扶桑社新書)だ。
かなり分かりやすく説明されており、巻末にはTPP第11章の和訳が載っている。第11章の和訳だけでも新書版で26ページにも及ぶ。このことからTPPが非常に大部の取決めであろうと推測される。
また、2010年10月1日にいきなり菅首相が、臨時国会の所信表明演説でTPPに触れ、民主党内でも議論が進んでいた政策ではなかったため、民主党内部で議員110名以上を集めた反対集会が10月21日に行われたそうだ。少なくとも、政治主導であるはずの民主党で、政治主導ではなく、総理主導になりかけていることは事実なのだろう。
TPPの推進派の内閣府・経産省の試算はプラス評価、農水省の試算はマイナス評価、つまり本当のところは、プラス効果をもたらすか、マイナス効果をもたらすか、誰も明らかに出来ない状況にあるようなのだ。もちろん農水省は、農業保護を是とするから、マイナス評価なのだろうという穿った見方も可能だが、この本は、実は農産物にかけられている日本の関税は一部農産物を除き、農産物輸出国よりも低い関税率になっていると指摘する。
現に、OECDから引用した主要国の農産物平均関税率の表をみると、インド・ノルウェーは120%を超える平均関税率、韓国でも60%を超える関税率、開かれたといわれているEUですら約20%の関税率を維持しているのに、日本は20%を大きく割り込んだ関税率しか維持していない。
ということは、既に農産物に関しては、十分日本は開かれた国になっているとも言えるはずだ。それなのにどうしてさらに「国を開く」等という必要があるのだろうか。政府の言っていることは相当ミスリーディングな内容となっていることに注意しなければならないようだ。
詳しくは、本書をお読み頂くとして、各章における著者の、まとめだけを引用しておく。
第1章
①日中FTAの代替案としてTPPが急浮上した。
②TPPはFTAと異なり「例外なき100%の市場開放」を目指している。
③推進派は経済的メリットを根拠。
④反対派は時期尚早だと考えている。
⑤是非を問う議論は始まってもいない(執筆時点で)。
第2章
①TPPでメリットを享受できるのはグローバル企業である。
②TPPでは政府調達(公共事業)も開放対象となる。
③TPPでデメリットを被るのは大多数の国民である。
第3章
①TPP加盟国及び参加予定国の目的は輸出である。
②低購買力かつ小規模市場の開放は、高付加価値輸出を望む日本の利益になりにくい。
③通貨安誘導をしている各国にとって、日本は格好の輸出先である。
④TPP参加国は既に、日本とFTAを結んでいる国と利害対立国が大多数を占める。
⑤国益と日本企業の利益は必ずしも一致しない。
第4章
①現状のままTPPに参加すれば、地域経済は壊滅的な打撃を受ける可能性がある。
②国は地方から壊れる。
第5章
①TPP参加論議に国益確保の視点が失われている。
②「国民」、「企業」、「国」の利益を増進させるには征爾の力が不可欠である。
③十分な議論と検証を行えば、よりよい選択が出来る。