ステージでは、サーカス団長がマイクを持って、外国語で、次に登場するパフォーマーの紹介を続けていた。
外国語がからっきしの私でも、団長の説明がドイツ語であることくらいはわかる。間違いなく英語ではないし、なんといっても、このサーカスが本拠地を構えているのは、ここ、ドイツのミュンヘンだからだ。子供たちと子供連れで埋まっているこのサーカスで、スペイン語の解説をやるはずがないだろう。
今回で、4度目になるが、私は飽きもせずに、ミュンヘンを拠点とする、お気に入りのクローネ・サーカスの見物にきていたのである。
以前ブログに書いたかもしれないが、クローネ・サーカスには、CMで見たシルク・ド・ソレイユのような、ど派手な演出まではないように思う。
しかし、毎回の舞台に工夫が凝らされ、子供たちを楽しませることにかけては、どこのサーカスにも引けをとらない。なにより、サーカスは華やかな夢の舞台であることが良い。昔から日本にあるように、子供に向かって「悪いことをしたらサーカスに売るよ。」といった何となくうらぶれた感じが全くないのが良い。
映画「ロザリンとライオン」(だったかな?)に出てきた、ケーニッヒ・サーカスも、(あんな大人向きのプログラムがあったのかは忘れたが)おそらくクローネサーカスを下敷きにしていたのではないかと思ったことがあるくらいだ。
そこに、突然私でも理解できる単語が耳に飛び込んできた。
「・・・・・・・フロム、ヤパン、タイ・トージョー!」
これはっ!
ステージに走り出してきた、黒髪の少年。
間違いない、日本人の少年なんだ。
少年といっても、わずか10歳か、せいぜい12歳くらいだ。
少年はにこやかな笑みを浮かべつつ、すばらしいジャグリングの技をいくつも披露する。会場内には、彼の演技にあわせて、手拍子も自然とわき起こり、演技終了と同時に拍手と喝采がやまない。
私は、この世界に詳しいわけではないが、きっと、彼はすでに世界屈指のジャグラーといっても、罰は当たらないのではないか。
一度、ステージから走って引っ込もうとした彼を、途中で団長が呼び止め、再度ステージで挨拶をさせているのが、初々しい感じを受けた。
彼のすばらしいジャグリングの腕前は、下記のリンクから動画で見ることもできるので、紹介しておきます。
http://www.legacyjp.com/jugglers.html