中森ゼミ1987会

 私が、京都大学時代お世話になったのが、中森喜彦先生(京都大学名誉教授・近畿大学法科大学院教授)であることは何度もお話ししてきたとおりです。

 私達のゼミ同期生の中で、昨年逝去した信國乾一郎君の1周忌も近いということで、中森先生からの打診を受け、信國の奥様もお誘いして、1987年度ゼミ生の集まり(散策・夕食会)が、先日奈良で開かれました。

 これまでは信國が幹事を務めてくれていたのですが、今回は私が幹事となってしまいました。東大寺くらい見てればいいか、という私のアバウトな目論見は、紅葉見物に押し寄せた観光客の多さに粉砕され、プランもなにもなくなってしまったため、奈良散策は、奈良にお住まいの中森先生にご案内頂くことになってしまいました。

 本来、中森先生をサポートすべきゼミ生達が、中森先生にご案内頂くというのでは、先生におんぶにだっこしてもらうという学生時代と全く変わらないのですが、そこを、お小言を言われながらも、颯爽とこなして下さる中森先生は、相変わらず男前でした。

 若草山登山道で紅葉見物をしたあとは、「機械は好きだが人は嫌い」と仰る中森先生に、お気に入りのスポットに連れて行って頂きました。そこは、奈良の真ん中にありながら、ほとんど人が訪れない、しかも、人工的な建物がほとんど目につかない、広々とした場所であり、極めて清々しい気分にしてくれる場所でした。出来れば私も、他の方にはお教えしたくありません。

 余りの気持ちよさに、あれほど名著といわれる刑法各論をお書きになっていながら、中森先生が単独での刑法総論の基本書をお書きになっておられないことをつい忘れてしまい、「素晴らしいところですね。ここを散歩されながら刑法総論の構想を練られたのですか」、と言ってしまったところ、瞬時に「そりゃ、嫌みか!」とお叱りを受けてしまいました(笑)。

 夕食には、さらに東京からも旧ゼミ生が参加し、奥様が持ってこられた写真に酒を備えながら、信國の思い出などを話し合いました。

 そこで、信國が別のゼミ生の方に、病魔に冒され薄れゆく意識の中で、「那智黒の御曹司をよろしく頼む」、と言っていたことを、初めて聞きました(確かに、うちの親族で(株)那智黒総本舗をやっており、かつては私の父が社長でした。今は叔父が社長です。)。

 だからさ、前から言っているように、俺は弁護士という、やくざな仕事へ道を踏み外しちまったんだ。

 那智黒継いでないから、御曹司じゃねえんだ。信國。

 なんべん言っても、間違えてたんだな。

 それでも、いなくなっても、中森先生をはじめ、みんな、お前のことを気にしてくれているんだから、お前は本当に幸せモンだ。

 また、中森ゼミ1987会があるときは、戻ってこい。

 先生もみんなも待ってるぞ。

 急な日程の決定で、参加されなかった関西在住の中森1987会の皆様、また次の機会がございましたら是非ご参加下さい。

 また、お忙しい中、このような機会を与えて下さった中森先生、本当に有り難うございました。

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