閣議決定について~その2

 新司法試験合格者の増加に関する努力目標が、法科大学院など法曹養成制度の整備の状況を見定めるという前提条件を付して、閣議決定されていることは、先日のブログに書きました。

 しかし、閣議決定にどのような効力があるのか、明確ではありません。

 そもそも、閣議は内閣法に定められています。

第四条 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
② 閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣
 の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。
③ 各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができ
 る。
第六条 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。
第七条 主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、
 これを裁定する。

 このような規定が内閣法にあるのですが、閣議決定にどこまでの効力があるのか内閣法の規定だけでは分かりません。あくまで、内閣が職権を行使する場合に閣議に基づく必要があるということ、くらいです。内閣総理大臣が交代するなどした場合に、前の内閣での閣議決定が後の内閣を拘束するか全く分かりません。

 この点について、平成15年に国会で質問がなされており、当時の回答が一応参考になります。

平成十五年一月十日受領
答弁第四四号

  内閣衆質一五五第四四号
  平成十五年一月十日

内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 福田康夫

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員長妻昭君提出閣議決定(レセプト審査・支払の民間委託)の軽視に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
 衆議院議員長妻昭君提出閣議決定(レセプト審査・支払の民間委託)の軽視に関する質問に対する答弁書
一から三までについて
 閣議決定は、法令には当たらず、一般に、これに反したとしても法令違反となるわけではないが、内閣の意思決定として、その構成員たる国務大臣はもとより、内閣の統括下にあるすべての行政機関を拘束するものであり、各行政機関の関係職員はこれに従って職務を執行する責務を有している。
 閣議決定と異なる措置が採られている場合は、各行政機関は当該閣議決定に従って必要な措置を採ることとなる。
(以下略)

 この回答によっても余り明確にはなりませんが、閣議決定が少なくとも法令ではないことが明確になっています。したがって、ある内閣で一度閣議決定された事項につき、その内閣が総辞職するなどして、新しい内閣が成立した場合、その閣議決定が後の内閣にも拘束力を及ぼすという効果は、少なくともないように思われます。

 そうすると、新司法試験合格者につき、増加させる努力目標を定めた平成14年の閣議決定は、今も効力を維持していると言っていいのか疑問があるということになります。特に民主党が政権を奪取するなど政権交代が行われた現状で、なお従前の閣議決定が効力を維持していると言い張る根拠はないように思われます。そうだとすれば、司法試験合格者の増加に関する閣議決定を金科玉条のごとく維持しようとする、増員論者の方の主張は根拠がないことになりそうです。

 ※閣議決定の問題について、憲法の基本書等を参照しましたが、明確な記述が得られず、私の考えが必ずしも正しいとは限りません。しかし、閣議決定は少なくとも法令ではないのですから、その閣議決定に後の内閣が拘束される理由はないように思います。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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