たった今、大阪の街は、実に美しい夕焼け空の下にある。
刻々と変化するあかね色の空は、ボンヤリ見ていても、そうでなくても何となしか胸を打つ力がある。
そういえば「星の王子様」は、一日に43回も夕焼けを見たことがあったな、と思い出したりする。
しかし、実は、サン・テグジュペリの書いたフランス語の原稿は44回であり、英訳本は正しく44回なのに、仏語版では長らく原稿と違って43回と記載されていたという話を聞いたことがある。私の読んだ内藤訳では確か43回だったように思うので、仏語版に忠実に訳されたものだったのかもしれない。
43回だろうが、44回だろうが大して違いがないようにも思うが、今日の夕焼け空の美しさを見ると、星の王子様が43回の夕焼けを見たあとで、なおあと1回の夕焼け空を眺めたということは、王子様が自分の心を納得させるためにどうしても必要だったに違いないと思えてくる。
ここまで書いて、再び空を見たが、既に夕焼け空はどこかに逃げてしまったあとだった。
何度夕焼けを見てもまた夕暮れを心ゆくまで見られる小さい星も、悪くはないな、と思った。