フェルマーの最終定理(フェルマーのさいしゅうていり)とは、3 以上の自然数nについて、xn+yn=znとなる 0 でない自然数 (x,y,z) の組み合わせがない、という定理のことである。
17世紀の数学者、フェルマーが残したこの難題に挑んだ、多くの数学者達のドラマを描いたのが、サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」である。
フェルマー自身がこの問題について、「私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここでは記すことはできない」と記述しており、幾多の数学者がこの難題に挑んでは跳ね返されてきた。~ウィキペディアによると、フェルマー自身の証明は不完全だった可能性が高く、勘違いだったのではないかとの指摘もあるそうだ。
この難題は、ついに、360年経って、イギリスの数学者アンドリュー・ワイルズによって証明されるが、その証明に日本人数学者の功績が大きく影響していたことは、この本で初めて知った。
日本人数学者による、谷山・志村予想(モジュラーでない楕円曲線は存在しないという予想)が、フェルマーの最終定理を証明する大きな鍵となっていたのである。
しかし、研究中の谷山は挙式を数ヶ月後に控えながら自ら死を選んでしまう。 そして、二つ目の悲劇が起こる。谷山の婚約者だった女性が、谷山の後を追ったのである。
その女性は、こう書き記していたという。
「私たちは、何があっても決して離れないと約束しました。彼が逝ってしまったのだから、私もいっしょに逝かねばなりません。」
盟友を失いながらも志村は、更に研究を続け、多くの証拠を積み上げる。そして、証明こそ叶わなかったものの、単なる観測ではなく、「予想」の名に値する理論であることが受け入れられていき、最後には、フェルマーの最終定理の証明の鍵となっていく。
私は、大学入試の頃以来、数学からは遠ざかっていたが、難しい数学のことなど分からなくても、数学者達のすさまじい程のドラマは読むものの胸を打つ。
数学なんて・・・・、と毛嫌いされず、人間ドラマとして是非一読されることをお勧めしたい本である。
新潮文庫 税抜781円