社説氏は司法改革をご存じか?

 日弁連次期会長に宇都宮健児弁護士が選出されたことに関し、3月12日付朝刊で、新聞大手全国紙が一斉に社説で弁護士人口の増加ペースを緩める宇都宮次期会長の公約について批判を展開した。

 その多くが、新司法試験合格者3000人について、日弁連はOKしたではないか、ということに触れたものだった。あまりに何度も大手新聞各紙が、そのように書くので、一般の国民の方は、そんなものかと洗脳されているかも知れないが、もともと、日弁連は新司法試験合格者年間3000人を無条件に約束したわけではない。

 「こんな日弁連に誰がした」の著者である、弁護士小林正啓先生の指摘で知ったのだが、江田五月議員のブログにも明確に書かれている。

  http://www.eda-jp.com/etc/nk/000904.html

 (上記ブログより引用)

 日弁連は、法曹一元制度(弁護士経験者が裁判官・検察官になる、というシステム)の採用、法律扶助制度の大巾な拡充、裁判官・検察官の大巾な増員、などと抱き合わせにしてOKサインを出していたのですが、このへんのところは(案の定)適当にすっぽかされて、「年間3000人」と「法科大学院」だけが一人歩きをする内容になりました。

 (引用ここまで)

本来の司法改革は、裁判所改革を提唱したことからはじまった。それが途中でねじ曲げられたのだ。本当に、国民のための司法改革を旗印に据えたいのであれば、大手新聞各紙は、本来の司法改革の趣旨に立ち返るべきはずだ。つまり、既に相当程度実現してしまった弁護士人口拡大について騒ぎ立てるのではなく、全くといって良いほど進展していない、法曹一元制度(これは無理かも知れない)・法律扶助制度の大幅拡充(これは必要だし、可能)・裁判官、検察官の大幅増員(これも必要だし、可能)が実現されていないことを指摘すべきはずだ。

 また、法化社会が進展するはずだという目論見が大いに誤ったものであった点や、会社が弁護士を雇用するはずだという目論見が全く誤ったものであったこと(大手各新聞社がどれほどの弁護士をインハウスとして雇用しているか聞いてみたいものだ)、あれほど鳴り物入りで導入された法科大学院制度(大手新聞各紙は現実に法科大学院が導入される前から法科大学院制度さえ導入すればうまく行くかのような記事を連発していたように思う)が、実際には十全に機能しなかった事実を明確に示すべきではないのか。

 まあ、大手新聞社にとって、法科大学院は全国広告を打ってくれる貴重なお客様だから、面と向かって批判しにくいのだろうが、それで怯んでいるようでは、国民の真の知る権利を実現しようとするマスコミの名折れではないのだろうか。

 また、本当に過疎地で弁護士に依頼したくてもできない人が多数いて、その解決をすべきだと本当に大手新聞社が思うのなら、先日も書いたが、口先だけで他人にやらせようとするのではなく、弁護士会に多額の寄付をしてくれればいいし、そうでなくても弁護士会と協力して、大々的な広告を新聞社の負担で出してもらいたい。きっと弁護士会は協力して、過疎地住民の法律問題に対応してくれるはずだ。それと同時に、いかに日弁連や各弁護士会が、弁護士各自から徴収したお金を使って、どれだけ人権に資する活動を行っているのか勉強してもらいたい。

 それが嫌でも、インハウスで弁護士を雇用して、過疎地の住民を救えば良いではないか。あれだけ都会の一等地に立派な社屋を構えているのだから、できるだろう。会社の社会的な評価も必ず上がるだろう。先日の日経新聞に掲載されていた初任給でみると、大手新聞社の初任給は他の会社よりずいぶん良かったように記憶している。もし、社説氏のように、「弁護士は割の良くない仕事もやれ」といいながら、自らは余裕がないというのであれば、それは言い訳になりはしないか。

 事実を確認することもせず、単なる思い込みをもとに、弁護士を批判していれば良い、という安直な社説で会社からお金を頂けるとは、私から見ればずいぶん羨ましい。

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