日弁連会長選挙~その5

 昨日、日弁連会長候補のお二人から、ハガキが届いていました。日弁連の会長選挙の規定により、ハガキを出せる回数は決まっているようです。

 いずれの候補が優勢かについては、情報が錯綜しており、正直言って誰にも優劣不明というのが本当のところではないでしょうか。

 日弁連会長選挙は基本的には、最多得票者で決まりますが、52ある弁護士会の総数の3分の1を超える弁護士会において、最多票を取得する必要があります(日弁連会則61条1項・2項)。つまり、52÷3=17.33・・・ですから、どんなに大票田の東京・大阪で票を集めても、すくなくとも18の弁護士会で最多得票を得ていなければ当選できません。

 日弁連自体も勝敗を全く読めず、再選挙を見据えた日程調整をしているとの噂もあるくらいです。

 さて、昨日のハガキにより、法曹人口問題に対する両候補の姿勢が明らかになりました。

 宇都宮候補は、「弁護士の質を維持するために年間1500人に新司法試験合格者を減らす必要がある。」と述べられ、ついに明確な数字を挙げられました。従来の1000人、1500人の声に耳を傾けという主張からは力強く前進したと言えましょう。

 山本候補は、従前通り、「現在の合格者数にこだわらず、更なる削減の方向も含めて対処します。」と述べるに止まっていますが、削減方向の提言も含めて、と述べていたのに比べると、僅かながら削減方向への傾斜を強めています(従前は削減方向では提言止まりでしたが、手段に提言に限らないという可能性が出てきました)。

 おそらく両候補とも、全国公聴会で、相当多くの弁護士から現実を突きつけられたのでしょう。このままでは弁護士自体が魅力を失った職業となり、優秀な人材が集まらなくなり、法曹の全体的な質の低下は国民に被害を与え、最後には司法への信頼すら失われる、という危険を、ようやく少し感じてこられたのではないでしょうか。現に、法科大学院志願者は減少の一途です。

 ただ、新司法試験合格者を今すぐ、1500人にしても、政府が目標としていたといわれる、「法曹人口5万人」をはるかに超えて増加した時点で均衡します。驚くべきことに、今すぐ1000人の合格者に限定したとしても、弁護士は5万人をかなり超えるそうなのです(※2月8日訂正→(私の記憶違いでした正確には、)法曹人口はほぼ5万人になるそうです。)。つまり、簡単に言えば、後先考えずにアホほど増やした、というのが実情のようです。

 余談になりますが、政府の目標は弁護士人口5万人ではなく、法曹(弁護士・裁判官・検察官)人口5万人だったように思います。昨年4月時点での法曹人口は簡裁判事を含めれば33146人でした。昨年の2回試験合格者数約2340名が仮に全員法曹になったとすると、既に、現状で35500名近くの法曹がいることになります。もし新司法試験の合格者が約2000名で固定されたとして、法曹の自然減がないとすればあと7年で、3000名になればあと5年で法曹人口5万人になります。裁判官・検察官の増員は期待できません。昨年の検察官採用者が一昨年より減少したとの報告もあるくらいです。一方で通常の訴訟事件は、過払い金請求訴訟を除くと減少の一途です。

 兵庫県弁護士会において、司法試験合格者を段階的に1000人にするべきであるという総会決議案が、武本夕香子先生らのご尽力で常議員会を通過し、兵庫県弁護士会の総会に上程されることになったそうです。是非とも兵庫県弁護士会の若手の方には頑張って総会決議案を通して頂きたいと思っています。

 大分脇道にそれてしまいましたが、両候補とも、人格・識見とも抜群であることは周囲の方々の評価ではっきりしているようです。いずれの候補も、人間的には日弁連会長として相応しい方なのでしょう。

 そうだとすれば、政策を良く読んで、最も弁護士の将来を見据えてくれる政策を約束してくれている候補者に投票するべきでしょう。自分たちの乗った船の船長を自分たちで選択できる機会です。

 ちなみに、おそらく若手の方が思っておられる以上に船長の権限は強大です。 全ての副会長が反対していても、会長が「この方針で行く」と決断すれば、日弁連執行部全体が会長の方針で進まざるを得ないのです。仮に日弁連が地方の意見を聞くといっても、日弁連執行部に尻尾を振る単位会からは、基本的には日弁連執行部の意見に沿った委員しか推薦されません。私は一昨年の法曹人口問題PT、昨年からの常議員会、さらには日弁連の法曹人口問題に関する会議を傍聴するなどして、その様子を垣間見ることができました。

 ですから、日弁連会長選挙は、遠い向こう岸の話ではありません。すぐ身近にあって、直ちに影響してくる問題です。特に若手の方は、「誰でも一緒じゃん」などと勘違いせずに、政策を良く検討されて、自分の将来を見据えて判断して頂きたいと思っています。

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