日弁連会長選挙~その1

 主流派の山本弁護士と知名度抜群の宇都宮弁護士が立候補された、日弁連会長選挙であるが、今のところ、どちらが有利という情報も入ってきてはいない。まさしくガップリヨツの状態ではないかという声が一番多く聞かれている。

 両候補の選挙公報はまだ掲載されていないが、両候補者の挨拶、政策及び意見については、既に日弁連HP会員専用サイトにおいてPDFファイルで公表されているので、弁護士であれば誰でも容易に読むことができる。

 日弁連の対外的政策については、両候補とも、市民の方が使いやすい司法を目指す、法律扶助制度を拡充・改善しお金のない人でも、弁護士の利用をし易くするよう予算措置を求めるなど、大体同じような内容であり、大きな違いは、ざっと見たところ見当たらないように思われる。

 オン・ザ・ジョブ・トレーニング(お医者さんでいえば研修医の先生が仕事をしながら技術を磨くこと)さえ、満足に受けることができなくなりつつある若手会員の現状を放置できないとして、若手会員に対するサポートについても政策で明言されており、両候補とも、対応されるおつもりのようである。

 しかし、その若手会員のサポートが必要になったのは何故なのだろう。私の見解は、需要もないのに弁護士数を爆発的に増やしたのがその原因の最たるものであり、おそらくこの見解は間違っていないと思う。弁護士の需要があれば、法律事務所は新人弁護士を雇うだろうし、若手弁護士が仕事にあぶれることもないはずだからだ。つまるところ弁護士増員が叫ばれた際に、マスコミや経済界は、需要はあるのに弁護士不足である(採用したいが弁護士が採用に応じてくれない)と嫌というほど言いつのっていたように記憶するが、結局、企業は弁護士を爆発的に大量に採用することはついぞなかった。

 したがって、当時の「弁護士需要の存在と、それと比較した弁護士不足」という経済界とマスコミの大キャンペーンは嘘であったか、そうでなければ大きく事情が変わったのだろう。

 経済界ばかりではない。私の手元に、市民の方が法律相談に来られる大阪弁護士会総合法律相談センターの取扱件数(自治体法律相談件数を含む)が手元にあるが、平成14年の82303件をピークに法律相談件数は減少の一途をたどり、平成19年は68575件であり、約17%の減少である(平成20年は少し増加して70259件になっているがそれでも約15%減である)。法律相談の減少については、司法書士の一部に簡裁代理権を付与したことも影響しているのだろうが、この間に弁護士の数は、ほぼ150%に増加している。 まともな状況ではないだろう。

 ちなみに、私が弁護士になった頃は、「弁護士になった以上全員平等だ。」という意識の方が強かったように思うが、今は、若手会員へのサポートが会長選挙の重要な点とされているのだから、弁護士会全体で若手をサポートしなければならないほど、若手が苦境に陥りつつあるというのが現実なのだろう。
 つまり、これまで日弁連も一緒になって推進してきた司法改革は、成果もあったのかもしれないが、若手弁護士や新しく弁護士になろうとする者を苦況に陥れる副作用を有していたことは間違いない。

 以下両候補の政策で、若干温度差があるように思われ、かつ、私が注目している①法曹人口の問題、②予備試験の問題、③隣接士業の問題について、私の勝手な見方から、簡単に考えてみたいと思う。

(続く)

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